ザザのワルドへの嫌がらせは続きますw
ZEROの使い魔の世界に転生しました
第34話 お酒は控えめに
こんばんは、どういうわけか仲間うちに危険人物指定を受けたザザです。
ボクらは、ラ・ロシュールで一番上等な宿、『女神の杵』亭に宿泊する事になりました。
ここの宿の内装はとても素敵。
床と同じ一枚岩からの削り出しで、顔が映るぐらいピカピカに磨きあげられたテーブルとか、とってもゴージャス。
イスは石じゃないけど、クッション付きのお洒落な品。
ああ、出来る事なら2~3日、ここでワイン片手に寛ぎたい気分です。
ワルド子爵は原作通りルイズを連れ、アルビオン行きのフネをチャーターするために桟橋へとお出掛け中。
残ったボクとアホコンビは、宿でゴロゴロする事に。
ですが、ワルドに嫌がらせをする予定のボクに休む間はありません。
才人くんとギーシュくんには悪いけど、次の行動へと移らせていただきます。
「さて、と」
「「っ!?」」
ん?
何故身構える、アホコンビ?
「ギーシュ」
「な、なんだね、ザザ?」
「女性2人部屋と男3人部屋をとってくるから、才人くんと2人でみんなの荷物を移動させておいてよ」
「あ、ああ、その程度なら喜んで」
「いいぜ、ザザ」
「後・・・」
「「っ!?」」
だから、何故身構える、アホコンビ?
「お金渡しておくから、適当に飲み食いしてて」
懐から50エキュー程出して、ギーシュに渡します。
「「・・・・」」
「おい、ギーシュ?」
「なんだね、サイト?」
「あれ、絶対、なんか仕出かそうとしてるよな?」
「奇遇だね。僕もそう思うよ」
「聞こえてるよ、君たち?」
なんだ、その疑ってる目は?
「ふう。あの爆弾なら、もう、本当にっ! 持ってないから、安心しなよっ」
「本当かい?」
「本当かよ?」
「じゃあ、ボクの荷物見ればいいだろ?」
そう言ってボクは、テーブルの上に背嚢の中身をぶちまけます。
但し、別にまとめていた下着類の入った子袋の中は、チラ見だけね☆
「・・・・ふう~、だ、大丈夫そうだな」
「そのようだね、サイト」
ようやく安心してくれましたか、2人とも。
「じゃあ、ボクは情報収集に出るから、2人はここで留守番しててね」
「ん? 俺も行こうか、ザザ?」
「才人くん、ラ・ロシュールは始めてだろう? ついて来なくていいよ。ボク1人で行くから」
「いや、もう日が暮れてるぜ? 危なくないか?」
「そうだね、サイトの言うとおりだ。ここは、君に代わって僕が行こうか?」
おっ、なんかまともだぞ、お2人さん。
「いや、ボク1人でいいよ。君ら、この辺り詳しくないでしょ? それに今はこの港町・・・アルビオンから逃げてきた傭兵とかが多いんだ。中にはメイジや銃持ってる人も当然いる。荒くれ者の巣窟だよ、酒場とかは、ね。それが解った上で酒場とかで怪しまれず聞き込みできる? ボクは慣れてるから平気だけど」
「「・・・・・」」
「一緒に来るかい?」
「「いってらっしゃい」」
ちっ、以外に根性ないな。
「じゃあ、いってくるね。適当にゴロゴロしてて」
「「は~い」」
よし、出掛けましょう。
アホコンビから別れて10分程。
適当に町中を歩く振りをしながら、ボクは目的地である一軒の酒場へと入ります。
目指すはカウンターの端っこ。
そこに腰掛、強面のマスターを呼びます。
「何にする?」
「上等のミード(蜂蜜酒)を1つ」
「うちは安いワインか麦酒(エール)しかないよ」
「じゃあ、キンキンに冷えたアルビオンの麦酒を。蜂蜜入りで」
ボクが注文すると、すぐに木のジョッキに注がれた麦酒が出てきました。
まずは、一口。
温い。
「こんな馬のションベンみたいな麦酒が飲めるか」
「あん? お客さん、ちょっと奥で話しましょうか?」
ボクが文句を言うと、マスターはカウンター脇の扉を顎でクイっと指します。
「上等だ」
マスターに連れられ扉の奥へ。
そこは、酒樽や瓶を詰めたケースが並ぶ倉庫です。
その倉庫の隅まで歩くと、マスターが戸棚の1つをスライドさせ、隠し部屋へとボクを誘いました。
隠し部屋に入った途端、マスターが敬礼。
「予定よりも早かったですね、ザザ様」
「うん。で、状況は?」
ボクは隠し部屋の席にゆったり着きながら、彼に尋ねます。
「はっ! ザザ様の予測通り、ここ2~3日の間で傭兵を集めている人物を確認。『土くれ』のフーケを名乗る盗賊メイジ達の存在も確認しました」
「・・・達?」
「はっ! 名乗っていた者は、3人のメイジ達です。ミレディ殿の報告によると、おそらく模倣犯だそうです。なお、ミレディ殿は彼らの動向を探るために、彼らに合流。雇い主に近付き、今現在も調査中でありますっ!」
「よろしい。で、フネに関しては?」
「はっ! スヴェルの月夜以降しかどのフネも出航しない模様です。まあ、一部、金をバラ撒いて、出港の妨害もしましたが」
「なるほど。では、『あのフネ』以外は子爵がゴリ押ししようとも雇われない?」
「はっ! その可能性はかなり高くなっております」
皆さん、ここまでの会話でお気づきになりました?
そう、この酒場は、ガスコーニュ家が設立した諜報機関の1つなのです。
普通に酒場を経営しながら、情報収集をさせているだけですが、このお店は立派な諜報機関なのですよ、えっへん。
商人、傭兵、旅行者等、酒場は色々な情報が飛び交います。
彼らの情報を集める事は大変ですが、それによって諸外国の事も早く解るし、儲け話のネタも早めに拾えるというもの。
我がガスコーニュ家だけでなく、国のためにもなるって訳です。
それに、アルビオンの情勢を知るには持ってこいな土地ですからね、ラ・ロシェールは。
「後は、傭兵達のたまり場ですが、―――や―――と、いったところです。治安もあまり良くありませんね。刃傷沙汰の喧嘩も毎日起こってます。どうか、お気をつけを」
「解りました。で、ボクらの次の行動だけど・・・」
ボクは今後の予定をマスターに知らせます。
おそらく、明日の夜に傭兵達に襲撃される事や、スヴェルの月夜を待たずに出航する事などです。
原作通り進むか判りませんが、予想される危険への準備は大切ですからね。
「やはり、家臣団からの援軍を増やすべきでしたか?」
「いえいえ、大丈夫。既に5名も、ラ・ロシェールに潜り込ませてるんでしょ? だったら、当初の指示通りに動いてもらえれば問題ありませんよ」
「しかし、ザザ様。襲撃が予想されて動かないのは、私は納得が・・・」
「いいんですよ。下手に武力介入すると、諸侯が五月蝿いですから。ガスコーニュ家のため、ここは態と放置して下さい。計画が狂います」
「解りました。ですが、ご無理はなさらぬよう願います。ザザ様に何かあれば・・・」
「解ってますよ」
小言を言われそうなので、退室する事にします。
聞きたい情報は、もう手に入れましたからね。
「では、私は今後も情報集めに集中します。御武運を」
そう言うと、マスターは隠し部屋から出る前に一本の瓶を渡してくれました。
蜂蜜酒の入った瓶です。
「・・・ったく、探せばあるじゃないか」
「悪いね、お客さん。また仕入れとくから、今後とも良しなに、へへへ」
ボクは怒った振りをして、酒場を後にしました。
こういうやり取りって、なんかスパイ物っぽくてイイよね☆
「ただいま」
「「お~かえり~」」
『女神の杵』亭に戻ると、テーブルいっぱいに料理や酒を並べたアホコンビが待ってました。
すっかりデキあがってますね、こいつら。
まさか、渡した50エキュー全部使ったのでしょうか?
「いや、もう呑めねぇーって! ぎゃははははっ」
「なんのなんの、まだまだこれからでしゅよ、サイトーきゅんっ」
「「わははははっ」」
「仲いいな、君ら・・・まあ、いいや。部屋の鍵は?」
「はい、ろーぞ」
「鍵? 鍵はだって? うははははっ!」
ギーシュから鍵束を預かります。
酔っ払いに預けるのは危険ですからね。
「おひおひ、なんで鍵で笑うんらい、サイトーきゅんっ!」
「だって、鍵だぜ。鍵! ぎゃははははっ」
「そうきゃ。鍵かぁ。あははははっ!」
ダメだ、こいつら。
何言っても笑う程酔ってますね。
どこがメデタイのか、2人で肩組んで乾杯までしてやがります。
こいつら、絶対に任務の重要性を解ってないな。
ボクが呆れていると、背後から声。
「なんだ? 随分と楽しそうだね?」
「あぁ、子爵。おかえりなさい」
振り向くと、フネの交渉に出掛けた2人が戻ってきていました。
ワルド子爵とルイズは疲れた表情です。
「どうでしたか?」
「ふう。やはり、アルビオンに渡るフネは明後日にならないと、出ないそうだよ」
「急ぎの任務なのに・・・」
ルイズは口を尖らせてますね。
まあ、大金を詰むぐらいしないと始めから無理なんですよ、お2人さん。
ワルド子爵も大方、明日のスケジュールのために無理強いはしなかったでしょうけどね。
「まあまあ、そんなにブーたれない。なんなら、明日はボクが交渉しにまいりましょうか?」
「いや、言い出したのは僕だ。任せて欲しい」
「そうですか? じゃあ、今日は食べて呑んでゆっくり休みましょう」
「そうね。そうしましょうよ、ワルド」
「そうだね」
「「乾杯~~っ」」
「ところで、アレはなにかね、ミス・ガスコーニュ?」
ワルド子爵がアホコンビを指差します。
「見たままの酔っ払いですが、何か?」
「そ、そうか・・・ふう」
席に着くなりため息をつく髭でした。
「そうそう、ルイズ」
「なに、ザザ?」
「良い物を仕入れてきました。一杯どうです?」
そういってボクは蜂蜜酒をルイズのグラスに注ぎます。
「あら? これ蜂蜜酒じゃない! いただくわ」
「どうぞどうぞ。よかったらワルド子爵も、どうです?」
「あぁ、いただくとしよう。喉が疲れていてね。ちょうど甘いものを飲みたかったんだよ」
ボクはルイズとワルドに蜂蜜酒を勧めました。
「さあさあ、料理もたんとありますので、しっかり食べて英気を養いましょう」
一時間後・・・。
「うぷっ。もうにょめらいっ! ひっく!」 ←髭
「わらしもぉ~」 ←ルイズ
「「うひゃひゃひゃひゃ」」 ←ギーシュと才人
「いやあ、みんな楽しいねぇ」 ←呑んだ振りしかしてないボク
くくくっ、君らに呑ませた酒は、途中からキツイ酒に切り替えたのですよ。
特に、ワルドにはとびっきりの一品をね。
しかし、以外に気付かれないものだな。
舌がバカなのか、ワルド?
もう少し、人から杓される時は注意しなよ。
「さて、じゃあ今日はもうお開き。部屋を取りましたから、寝ましょう」
ボクは鍵束を机の上に置きます。
「ん? もう、そんにゃ、時間きゃね? うぷっ」
気持ち悪そうですね、ワルドさん。
「ボクとルイズは相部屋。そして、子爵とギーシュと才人くんも相部屋。ちゃんとエキストラベッドを入れてますから3人で寝て下さいね」
「まっら! ぼきゅとルイジュはどーしつら」
呂律まわってませんよ、髭。
「こんにゃきゅしゃらから、とーれんらろ(婚約者だから、当然だろう)?」
「そんにゃ、らめよぉ。まら、わらしらちけっきょんしれるわけららいじゃらい(まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない)」
「らいじなはにゃしがあるんら(大事な話があるんだ)。ふらりっきゅりではにゃし(2人っきりで話したい)・・・おえっ!」
2人とも泥酔してますね?
「はいはい。子爵の言いたい事は解りますが、話なら明日にでもして下さいな」
「しきゃしらねぇ~」
「そんな状態で話なんて出来ないでしょう? ほらほら、ルイズの方はもう寝ちゃってますよ」
「しょんにゃころは・・・」
ワルドが横を向くと、ルイズはもう夢の中。
「はいはい。解ったら、今日はギーシュと才人くんと寝ましょうね」
「しきゃしらねぇ~」
「間違いでもあったら、ボクがラ・ヴァリエール公爵に殺されてしまいますからね。酔って間違いを起こしましたじゃ、子爵もただで済みませんよ」
「・・・しきゃららいらあぁ(仕方ないな)」
そういってワルドは諦めたのか、よろよろふらふらしながら男3人部屋に向うのでありました。
ギーシュと才人くんも肩組んでよろりら。
ルイズはボクが背負って運びます。
よし、ワルドの妨害1つ完了。
しかし、結局キュルケとタバサ来なかったなあ・・・。
まあ、なんとかなるか。
明日の朝の才人くんとワルドの戦いも気になるし、ボクも寝ようっと。
翌朝、ワルドが部屋に来ました。
すげー酒臭い状態で。
原作通り、才人くんの実力を確認するために決闘するみたいですね。
ルイズを介添え人として呼びに来たようです。
当然、ボクも見学に行く事にしました。
ルイズの準備を手伝ってから、物置場にされていた練兵場に向うと、ワルドと才人くんが待っていました。
ワルドはレイピア状の杖を、才人くんはデルフリンガーを構えてます。
「俺は手加減なんてできませんよ。うぷっ」
「おえっ。かまわぬ。全力で・・・あ、ちょっと待ってくれたえ」
そういってワルドは、隅の方へ走ります。
「おうえぇ~~~~~っ」
才人くんもそれを見て、反対の方へ。
「おえ~~~~っ」
もらいゲロか?
「大丈夫かなあ、あんな状態で? ・・・・あれ? ルイズ?」
横を見ると。
「おぇ~~~~っ」
あぁ、ルイズまでががが・・・。
そんな訳でして、その後に始まった決闘は最悪なグダグダ展開でした。
杖を振るたび、剣を振るたび、おえおえ言うてます。
精彩を欠いた動きで2人はチャンチャンバラバラ。
デルフリンガーも呆れてものが言えません。
5合ほど打ち合ったら、2人ともまた練兵場の地面に養分を撒きに行く始末。
「君ではルイズを守れない」
・・・とか、言う事も出来ず、10合目辺りでワルドはダウン。
才人くんもワルドと同じタイミングでダウンしました。
2人並んで、おえおえ言うてますね。
ルイズの方も見学する余裕はなさそうです。
「うぷっ。ぎもぢ悪いから、部屋にがえっでもいい?」
「うん、戻ろうか」
ボクはルイズの介抱をしながら、部屋に戻りました。
いいとこないな、ワルド。
この日は、ボク以外夕方過ぎまで横になっていたそうです。
プロポーズする余裕もなかったね、ワルド。
うひひひ。
<続く>