いよいよ、春の使い魔召喚の儀ですw
ZEROの使い魔の世界に転生しました
第22話 いよいよ召喚
こんにちわ、ザザ・シュバリエ・ド・ガスコーニュです。
トリステイン魔法学院に入学して早1年。
待ちに待った使い魔召喚の時が近付いて来ましたよ。
かなり緊張しますね。
ここから『ゼロの使い魔』の物語が動き始めるのですから。
「早く来い、才人くんっ! 思いっきり剣術を指導してやるっ! そして、あの憎きあん畜生(ワルド)をぼてくりまわすのだっ! クックックッ・・・フフフッ・・・・ハーッハッハッハッハッ!」
美しい双月の月夜に向って1人吠えるザ・他力本願なボクでした。
ええ、ええ、まだワルドに怨みを持ってますよ、それが何か?
デルフリンガーくんも、才人の登場を今か今かと待っていますしね。
「判るっ! 判るぜっ! ザザの嬢ちゃんっ! 相棒がっ! ついに相棒が来るんだなっ!? 斬るっ! 斬るっ! 斬るっ!」
鍔をカタカタ鳴らせてデルフリンガーも夜空に吠えます。
テンションが上がってきた所で、まずは近況報告。
ボクの方は相変わらずですね。
授業態度が不真面目な癖に学年トップの成績をキープする問題児。
火ではキュルケに、風ではタバサに負けますが、それでも総合成績1位です。
毎朝の鍛錬も休みなく続けてますので、戦闘力は一切落ちてませんよ。
魔法はラインの上位から成長する気配がまったくないのがオチか。
ううっ、泣いてなんてないやいっ!
学院と王宮を行ったり来たりの生活も相変わらずです。
夏季休暇なんて、ほぼ全部お仕事でしたよっ!
姫様もマザリーニ枢機卿も人使い粗いよっ!
ルイズは原作とあまり変わらずかな。
てっきり『爆発』の2つ名でも付くかと思ったのですが、『ゼロのルイズ』と呼ばれてますね。
教室内でドカンドカン爆発させないようにしてたんだけどなあ、不思議。
魔法の実技は、全部教室の外でさせました。
まあ、何唱えても『爆発』になるから、『魔法が使えない=(才能)ゼロ』になったのかなあ?
『ゼロ』と呼ばれながらも、ボクの言った通り健気に魔法の練習をしています。
やはり辛いのか、何度も泣きつかれました。
うぅっ、ゴメンね、ルイズ。
でも、もう少しの辛抱だからね。
キュルケとタバサも原作に近いかな。
『微熱』の2つ名の如く、恋に生きてる模様。
熱しやすく冷めやすい性格で、男性遍歴が凄いんだよねぇ。
まぁ、どうでもいいか。
タバサの方が、ちょっと問題かな。
出来るだけ関わり合いたくなかったんだけど、彼女にどうも気に入られたみたい。
お菓子を食べに来たり、本を貸し借りに来るのは良いんだけど。
ボクの実践経験が豊富な所為か、やたら稽古を見学に来るのですよ。
ここで下手に鍛錬させちゃったら、タバサ裏切りイベントで確実に才人くんが殺害されちゃいそうで・・・・。
でも、彼女の境遇を原作で知ってるもんだから、教えないのも冷たいヤツな訳でして・・・。
仕方ないなぁと思いつつ、ナイフと体術だけ教えました。
おかげで、ボクの軍杖の稽古は学院外の森になりましたけどね。
ブレイドと剣術だけは絶対教えませんっ!
ゴメンね、タバサ。
モンモランシーとの仲は良好かな。
秘薬作りで仲良くなりました。
彼女の作る秘薬は出来が良いので、オットテールさんの商会に高値で卸す話をしたら『心の友』と泣きつかれました。
家が水の精霊さんの交渉役を降ろされてから貧乏一直線だったからでしょうね。
まあ、ビジネスライクな付き合いかな。
ギーシュの方も変わらず。
ボクを一時ライバル視してたんですけどねぇ。
グラモン家が裕福になった原因を知って、戦意がなくなっちゃったそうです。
ボクが裏でグラモン家の金回りを良くした事を、元帥から聞いたとか。
以後は普通に茶飲み友達ですね。
それと、ゴーレムを生み出す数が原作通り7体に増えた事かな。
あの、ヒラヒラ服と造花のバラも健在です。
ゴーレムにワルキューレと名付けるセンスといい、なんだかなぁ・・・。
タバサに引き続き問題がマリコルヌ。
このぽっちゃりくん、やたらボクの所に来るんですわ。
エサを与え過ぎましたかねぇ。
付き合う気0なボクに惚れでもしたのでしょうか?
気が付いたら、学院の噂でボクが彼とデキてるという事に・・・・何故?
噂を流したのはギーシュとモンモランシーかっ!?
ケティの事バラすぞ、ギーシュっ!
それとギーシュのどこが良いんだ、モンモランシーっ!?
ギーシュの事なんざ、ボクはこれっぽちも狙ってねぇよっ!
シエスタやマルトーさん含む平民さん達も普通。
ただ、ボクがやたら世話(ハンドクリームや新しい道具の手配)をしたため、かなり気に入られてしまったぐらいかな。
教師達も原作通りですね。
コルベール先生とちょびっとだけ仲良くなったぐらいですね。
やはりまだボクを警戒している模様。
あ、そうそう、ミス・ロングビルを名乗る女性が学院長秘書として雇われてましたね。
十中八九、『土くれのフーケ』ことマチルダ姉さんでしょう。
ボクの大好きなマローダーは、最近ちょっと不貞腐れ気味。
使い魔召喚が近付いてるからでしょう。
ボクとの関係が疎遠になるんじゃないかと思っているようです。
大丈夫だよ、マローダー。
ボクがヒト以外で一番大好きなのは君なんだから。
そういうと、召喚前日に、『吾を呼べ。汝こそ吾が生涯の友にして、吾が主だからな』と。
使い魔召喚って、呼び出した側が一方的に主従関係を強制する魔法なので、ボクはマローダーにそれをあまり使いたくないんだけどなあ。
友達のままでいたいと思うのはワガママなんでしょうか?
でも、マローダーがそう言う以上、出来る事なら彼を召喚したいですね。
それが、マローダーの望みなのですから。
さて、いよいよ春の使い魔召喚の儀となりました。
緊張しますね。
透き通ったさわやかな青空の下、トリステイン魔法学院の校庭に集まります。
2年生への進級試験でもありますから、皆気合が入っているようです。
引率はコルベール先生とギトー先生のお2人ですね。
ボクはルイズ達と同じコルベール先生の引率の下、使い魔召喚となりました。
よっしゃっ、ラッキー。
「これより春の使い魔召喚の儀を行います。まずは、ミス・ガスコーニュからっ!」
「はいっ」
コルベール先生からトップバッターにされちゃいました。
たぶん、ボクの成功を皮切りに勢いを付けようって魂胆ですね。
前に進み出たボクは使い慣れた軍杖を構え、『サモン・サーヴァント』の詠唱に入ります。
思う事はただ1つ。
呪文の成功よりもマローダーを呼び出す事。
「我が名はザザ・シュバリエ・ド・ガスコーニュ。五つの力を司るペンタゴン! 我が生涯の友よ! 我と共に地と空を駆ける友よ! 我の運命に従いし、『使い魔』を召喚せよ!」
呪文が完成すると同時に、銀色の扉・・・・門(ゲート)が現れました。
小さな馬車1台が楽々通れそうな高さと幅があります。
「おおぉっ!」
周囲がざわめきます。
何が召喚されるのでしょうか?
皆が期待の目で、ゲートを見ます。
シ~~~~~ンッ。
何も出て来ません。
これは失敗なのでしょうか?
いや、ゲートは出来ている事から失敗ではないでしょう。
ならば・・・・。
ボクは大声で叫びました。
「ゲートから出て来いっ! 我が生涯の友っ! マローダーーーーっ!」
「GUOOOOOッ!!」
獣の咆哮と共に銀色の門が砕け散ります。
そして、出て来たのは・・・・。
「マローダーーーーっ!」
マローダーでした。
ボクはマローダーに飛び付きます。
手に触れる毛皮の感触、匂い、間違いなくマローダーです。
うわーんっ、マジ嬉しいよ。
ほっぺたスリスリスリスリスリスリ・・・・。
「おほんっ。ミス・ガスコーニュ? 君が大切にしているマンティコアを呼び出して嬉しいのは判りました。他の人の番もありますし、次に移って下さい。『コントラクト・サーヴァント』に成功するまでが召喚の儀式ですよ?」
うっせぇ、コッパゲ。
空気読めよ。
今、感動のシーンだろが?
おっと、落ち着けボク。
マローダーの瞳を見ながら、ボクは再度確認します。
「本当にいいのかい? ボクで?」
マローダーは無言で頷いてくれました。
まあ、ボクとガスコーニュ家の人以外の前で喋らないよう言ってたのですけどね。
どうやら彼はボクの使い魔になる道を本気で選んでくれたようです。
嬉しいようで、また罪悪感もありで、ちょっと後ろめたいですね。
ですが、来てくれた以上、ボクは彼と主従の契約を結びます。
軍杖を彼の前で振り、呪文を唱えました。
「我が名はザザ・シュバリエ・ド・ガスコーニュ。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
スッと軍杖をマローダーの額に当て、精神力を注ぎます。
最後に、ボクはちょっぴり涙ぐみながらマローダーの頭を両手で挟み、彼の大きな唇へと静かにキスをしました。
「GURU?」
マローダーの右肩に光る文字が浮かび上がりました。
使い魔のルーンが刻まれたのです。
「ふむ、無事にコントラクト・サーヴァントは成功したようだね。そのルーンを見せてもらってもいいかね?」
「どうぞ」
コッパゲ・・・じゃない、コルベール先生がマローダーのルーンを確認します。
「《障壁》か・・・ホッ。魔力による盾を発生させる能力ですな。お転婆なミス・ガスコーニュならではのルーンですね。ふう」
「その安心したような吐息はなんでしょう? ミスタ・コルベール」
「おほんっ。さあ、次は―――」
ちっ、逃げたか。
コルベール先生は次の生徒のもとへと走って行きました。
まあ、いいや。
本当のメインイベントはこれからですもんね。
ボクはマローダーの横にちょんと腰掛け、マローダーを労います。
「これからも宜しくね、マローダー」
マローダーは頷きました。
「それと、使い魔になったから、もう学院内でなら人前で喋ってもいいよ」
「うむ、そうさせてもらおう」
「ゴメンね。ルーンが刻まれる時、痛かったでしょ?」
「割と痛かったが、気にするな。主が吾ら一族のために受けた痛みに比べれば軽過ぎる」
「主かぁ。もう友と呼んでくれないのかい?」
「吾のケジメよ、許せ」
「解ったよ、マローダー。ボクの生涯の友よ」
確かめるように、互いに身を寄せ合いました。
あぁ、この鬣のフワフワサラサラ感がなんとも・・・。
幸せのあまり顔が、ニコニコと笑ってしまいます。
そんなボクは傍から見ると、物凄い不気味に見えるのかもしれませんね。
まあ、使い魔の召喚が終わった連中もすぐに同じような状態になりますから問題ないでしょう。
キュルケはサラマンダー。
タバサは風竜・・・たぶん、風韻竜でしょうね。
ギーシュはジャイアントモール(大モグラ)。
モンモランシーはカエル。
マリコルヌは白いフクロウ・・・何故、お前がハリー・○ッターみたいな使い魔を呼ぶのか不思議でならない。
まあ、風系統だから翼のある使い魔だろうけど。
ヤツが使い魔を使ってボクの部屋を覗きに来ない事を祈るのみです。
ドーーーンッ!
ドムッ!
ドカンッ!
ボーーーンッ!
立て続けに凄まじい爆発音が木霊します。
「また、主の友か?」
「・・・あぁ、ルイズだろうねぇ」
ドガーーーンッ!
5度目の爆発。
爆発の原因となっていると思われるルイズは諦めずに再度声を張り上げる。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン! 我の運命に従いし、『使い魔』を召喚せよ!」
ズズズズガーーーーーンッ!
また爆発だけ。
必死になるルイズとは裏腹に、周囲にいる生徒達の反応はどんどん冷ややかなものに変わっていきます。
ルイズを指差しこそこそと笑う者、悪意を隠そうともせずに侮辱する者、どうでもいいとばかりに文句を言う者。
みんなルイズが無駄な努力をしていると思ってるんでしょうね。
7回目の挑戦になると、周囲からの悪意あるプレッシャーが増し、なかなかルイズの詠唱が始まりません。
ですが、そんな誹謗中傷の中―――。
「何やってるのよ、ルイズ! 諦めないで! まだまだこれからでしょっ!」
「負けちゃダメ(ボソリ)」
「ここで諦めるなんて、君らしくないよ」
「お腹空いた~」
キュルケ、タバサ、ギーシュのエールが響きます。
但し、マリコルヌ手前ぇはダメだ。
下唇をギュッと噛み締め、ルイズは俯いたままでした。
諦めたのでしょうか?
ボクもルイズに駆け寄ります。
「ルイズ!」
「ザザ」
ボクは彼女の前で屈み込み、ルイズの顔を見上げます。
彼女の目は、涙を必死に堪えて潤んだ瞳でした。
「グスッ・・・わ、わわわ、私・・・・」
明らかに自信を失いかけたルイズ。
このままでは、彼女はここで諦めてしまうんじゃないかと、思ってしまいそう。
原作よりも弱い気がしますが、それはボクがルイズの支えになった所為。
だから、ボクは彼女を助けなくてはいけません。
「大丈夫」
「グスンッ。だ・・・大丈夫じゃ・・・ない・・わ」
「ルイズは頑張れば出来る子だよっ! ボクがついてるっ! キュルケ、タバサ、ギーシュ。みんな応援してるっ!」
「でも、でも・・・」
ボクはルイズの両肩に手を置き、ゆっくり言葉を伝えます。
「大丈夫だ、ルイズ」
「ザザ・・・」
「呪文にボクが唱えたように、一言か二言足すんだよ」
「足す? でも、それで上手くいくの?」
「大丈夫っ! ボクを信じて」
「おほんっ、そろそろ次の授業が・・・」
って、五月蝿いよコッパゲ!
空気嫁。
「ルイズに再挑戦させます」
「ミス・ガスコーニュ? だが、ミス・ヴァリエールはもう・・・」
「やります。・・・ミスタ・コルベール、再挑戦させて下さいっ」
よっしゃ!
ルイズが立ち直った。
ボクはすぐさま、ルイズの耳元に詠唱に加えるべき言葉を囁きます。
「・・・と、足せばいいよ」
「本当?」
「あぁ、絶対にこれで成功する」
「・・・・解ったわ」
ルイズの瞳に闘志が宿りました。
ボクとコッパゲは彼女から離れます。
杖を掲げ、ルイズの詠唱が始まりました。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン! 『デアイケイニトウロクアリガトウネ、アナタニアイタイワ、コッチヨ』。我の運命に従いし、『使い魔』を召喚せよ!」
付け足した言葉は日本語です!
確か才人は、出会い系サイトに登録したばかりの筈。
届け、彼女の想い!
ドッカーーーーーーーーーンッ!
本日最大の爆発です。
今までの爆発に比べて一際大きな爆発でした。
油断していたために煙を吸い込み、咳き込む生徒達からは抗議の声が聞こえてきます。
そんなのしった事かよ、とボクはすぐに『風』で生じた煙を吹き飛ばしました。
「ウソだろ!? ゼロのルイズが召喚を成功させるなんて!」
驚いた様な周囲の声。
ルイズの方も呆然としていました。
「・・・ウソ? わ、私、成功・・・した?」
「おめでとう、ルイズ」
新しくできたクレーターに、何者かが倒れています。
黒い髪、黄色い肌、服装はパーカーにジーパン。
明らかにトリステイン周辺で見ない出で立ちの少年が、そこに倒れていました。
平賀才人召喚っ!
よしっ、役者は揃った。
さあ、これからの毎日が楽しく忙しくなるぞぉ。
<続く>