連続投稿~w
第6話・ドッジボール
さてさて、なのはちゃん家の道場へ顔を出してから、あっと言う間に時は流れました。
まあ、俺の日常において特に変化はないかな。
私立に転校とか、薙刀の練習場所が変わったぐらいなんだよね、実質は。
なのはちゃんのお兄さんである恭也さんは、恭子お婆ちゃんにそっくりな顔だったのが笑えたなあ。
笑った後、木刀持った恭也さんに小一時間追いかけられましたが・・・。
でも、恭也さんを見た時、俺は思ったよ。
10年後には、恭也さんのような男になりたいってね。
始め会う時、戦々恐々としたよ。
俺となのはちゃんみたいに、美由希さんそっくりで女性にしか見えないお兄さんだったら、どう反応したらいいんだろうって。
よかったよ、恭也さんが士郎さん似で。
しかし、恭子お婆ちゃんもそうだったけど、高町家の人達はよく防具なしで打ち合ったりできるなあ。
士郎さんと恭也さんなんか、おとついは笑いながら刃のある小太刀で打ち合ってたし・・・。
しかも、打ち合いの最中に時々瞬間移動したみたいに離れた位置に居るし・・・。
う~~~ん。
やはり、武芸を極めんと己を高め続ける本物の武芸者は凄いな。
(作者注:戦闘民族高町家の武術レベルが超人レベルなだけです)
俺も『魔法』なしで恭也さんクラスまで高めたいものである。
ちなみに、俺の武術レベルは一週間程で美由希さんを追い越しています。
どうも美由希さん、技にムラがあるから隙を見つけやすいんだよね。
後、美由希さんが俺から一本取る時って、だいたい翠屋で恭也さんとすずかちゃんのお姉さんである忍さんが働いている時だけ。
いけませんよ、美由希さん。
妹が兄の恋路を邪魔しちゃあ。
そう言うと、悪鬼羅刹の如く強くなるのはなんでだろう?
まあそんな訳で、今では美由希さんが武術のライバルって感じ・・・かなぁ?
俺としては、良い稽古相手ではあるんだけどねぇ。
そういえばなのはちゃんに一度、一緒に稽古しないかって誘ったら。
「・・・まだ死にたくないの」
・・・って言ってたなあ。
まあ、なのはちゃん運動苦手って言ってたし、こればかりは仕様が無いか。
ついでに朝も弱いから、ジョギングも付き合えないって言ってたなぁ。
『魔法』については、今まで通りの修行をしている。
『マルチタスク』って言う並列思考を常時使って、脳内シュミレーションだね。
実技は、日曜とかに人気の無い神社で『結界』作ってやってるよ。
『魔力量』については、常時自分に負荷をかけて鍛えてる。
ライと出会った時は魔力量はF-だったけど、今じゃあBくらいまで上がっている。
努力の賜物だね。
まあ、素で魔力量がAAAのなのはちゃんやバカのSには及ばないけど・・・・。
あ、そうだ。
前の小学校の時よりも、友達が増えました~っ。
いえーい。
なのはちゃんにすずかちゃん、アリサちゃんの仲良し三人組。
それと、男の子が1人。
ん、言っておくけど神條のバカじゃないよ。
同じクラスに居る眼鏡をかけた子、坂東・美津緒(ばんどう・みつお)くん。
坂東くんは周りからBくんといつも呼ばれている。
大人しくて真面目そうな印象から、学級委員長を押し付けられた可哀想な子でもある。
Bくんとの出会いは普通。
図書室で勉強していたら話しかけられて、以後仲良くなったって感じ。
Bくんとの会話は大半が愚痴。
愚痴の内容は大抵バカとアリサちゃん。
バカは言わずとも解るけどね。
で、副委員長がアリサちゃんだったりする。
Bくんよりも統率力がある所為で、みんなBくんよりもアリサちゃんに従う訳です。
『ボクいらなくない?』と、一日一回は俺に言うんだな、これが。
うん、俺もそう思う。
下手に同情すると、俺に学級委員長を押し付けようとするので、『独走しがちなアリサちゃんを止められるのはBくんだけだよ』と、いつも誤魔化す俺。
実際、突っ走るアリサちゃんを止められないからね、Bくん。
その気持ちは解らんでもない。
俺も偶に振り回されるから。
「強いられてるんだっ!」
最近、そう言ってよく絡んでくるのは何とかして欲しい気がしないでもない・・・。
何か変なものに影響でもされたのか、どうにも心配な子である。
ちなみに、Bくんの趣味は模型だとか。
特に最近作っているのが、『軌道闘士ガンガルAGE』シリーズとか言ってたな。
TVアニメに登場するロボットの模型らしい。
Bくんの家に遊びに行った時、模型を見せてもらったけど、俺には『格好良いね』以上のコメントは出来なかった。
この辺りの趣味は、よー解らん。
だが、Bくんはイイヤツだ。
本当ダヨ。
後、言いたくないが神條のバカとは転校初日以降敵対中。
それともう1つ、指輪の状態が待機形態であるデバイスを持っているところ、どうやらバカも俺と同じ『魔導師』らしい。
しかも、あのバカ、体育の授業などに『魔法』を使う時がある。
おそらく運動で1番になりたいから使ってるんだろが、よく人前で使えるよな。
まあ、大半が制御に失敗して自爆している場合が多いようだが・・・。
あのバカの行動は本当、理解に苦しむ。
そう言えば、俺の居るクラスには不思議な事がある。
理由はよく解らないんだけど、男女のあだ名がA~Kになってる子達がいるんだ。
すげー不思議。
ってか、よく番号みたいなあだ名で本人達は怒らないものだと疑問に思う。
その事をBくんに聞いてみたら、幼稚園からずっとそう呼ばれていたから気にした事ないって言っていた。
そういうものなんだろうか?
ふと、疑問を感じた俺は、A~Eくん達(Bくん除く)と、F~Kさん達に訊ねてみた。
結果はBくんとほとんど同じだった。
うーん、不思議なクラスメイト達だなあ。
いや、もしかすると変なのは俺か?
よく考えてみたら、俺は海鳴市に来てから日が浅い。
うん、きっと番号みたいなあだ名で呼び合うのが、海鳴市の子供達の流行なんだろう。
・・・ヤな流行だな。
まあ、誰も気にしてないみたいだし、そういうもんなんだろうなぁ。
そう思う事にする。
さてと、社会の宿題も終わったし、今日はもう寝よう。
『聞こえますか・・・誰か・・・くに・・・・・・魔法・・・の・・・』
消え入りそうな男の子の声。
熟睡中だったので夢かと思ってたのだが、デバイスのライに相談してみたら『念話』だとか。
念話を受けたのはこれが始めてだった所為で、俺は何故すぐに起きなかったのかと軽く後悔した。
男の子の声は助けを求めているように思う。
どうしよう?
『魔法』という言葉が出ている以上、魔法に関係する何かが起こったのだろう。
念話を送ってきた男の子を助けたいとは思うけど、でも俺はまだ『魔導師』の卵でしかないんだよねぇ。
すぐに助けに向う事が良いとは思うが、未熟な魔導師の俺が駆け付けて足手まといになる場合もある訳で・・・。
はぁ~っ、一体どうしたものかねぇ。
重い気分で学校へと走って向う。
バス?
んなもん使うより、走った方が早いですよ。
最近気付いた。
学校に到着すると、何時もの様に仲良し三人組と挨拶を交わす。
おや?
なんだか、なのはちゃんの様子がおかしい。
聞くと、変な夢を見たようだ。
まあ、そういう日もあるだろうな。
多少心配はするけど、俺はそれどころではない。
寝ている時に聞こえた念話が気になっていたからだ。
う~ん、放課後になってから念話を送ってきた子を探すか・・・。
今日の体育はドッジボールか。
ほとんど遊びみたいなもんだけど、今じゃあ立派なスポーツの仲間入り。
世の中、何が流行るか解らんもんだね。
えっと、チーム分けは、おいうえお順で2チームか。
中田先生、こういう時はエラク雑だね。
ほら、チームの男女比が極端なものになる。
俺の入るチームが男3人だけだよ。
俺とBくん、そしてDくんという見た目が華奢な男の子3人がそろい、メンバーはほとんど女の子チーム状態に・・・。
そして、俺を敵視してるバカは相手チーム側。
外野を決めた後、試合スタート。
審判役の中田先生がボールをスローイン。
スローインを取り合いボールを手にしたのはバカだ。
バカがボールを大仰に構えて、俺のいる方を向く。
・・・ヤな予感。
「死ねや、おらあああああっ!!!」
「ちょっ! 危なっ!」
ボールを受け止める俺。
受けた両の手のひらがジンと痛む。
なに、こいつ?
ボールに『魔力』籠めやがって。
俺以外に当たったら、大怪我するレベルだぞっ!
「やるじゃないか、パチモン風情が」
「危ないタマ投げるなっ!」
神條のバカと睨み合う俺。
「フンッ、パチモンの血の色が何色か確かめてやろうと思っただけだ? さしずめぶんず色か?」
「どこの方言だよ? ぶんず色って?」
「フハハハハッ、パチモンになぞ教えてやらぬわっ。ググれ」
「あったまくるな、お前」
バカと言い合っている隙に、俺の手からボールが消える。
「いつまでボール持って突っ立ってんのよっ! 投げないならよこしなさいっ!」
「あ」
アリサちゃんにボール取られた。
そして、アリサちゃんはボールを振りかぶって、力強くスロー。
「えいっ!」
「うわっ!」
スパァンと小気味いい音が響く。
ありゃりゃ、Dくん同様華奢なEくんがアリサちゃんのボールに当たって外野に移動。
ボールはそのままこちら側の外野へと転がっていく。
「Bくん! パスパスッ!!」
「はいっ、月村さんっ!」
最初から外野で待機してたBくんが、すずかちゃんへとボールを弓なりな軌道で投げる。
すずかちゃんがボールを手にした瞬間、相手チーム側の女の子全員が男の子の背後へ退避。
「えいっ!」
放たれたボールは勢い良く飛び、男の子の影に隠れそこなった眼鏡のJさんに当たる。
「きゃっ! 月村さん酷いっ」
転がったボールは、今度はツンツンヘヤーのCくんへ・・・・が。
「寄越せモブッ」
「あっ」
Cくんからボールを奪い取るバカ。
先生注意してよ、あのバカを。
「なにすんだよ、神條!?」
「黙れモブ。俺様の活躍の場が減るだろうがっ!」
「はあ?」
「それと『さん』をつけろ、デコスケ野郎っ!」
「で、デコって・・・」
「いいから、デコスケはそこで見てろ。俺様の超絶スーパーな爆裂業炎魔球をこれから披露してやるんだからなあっ!!!」
何やってんだあのバカは?
またボールに魔力籠めるつもりか。
しかも、Cくん『デコスケ』って言われて涙目になってるよ。
メキメキッ。
バカの右手の筋肉が盛り上がり、ボールが真っ赤に燃える。
うあ、今度は『身体強化』魔法も合わせて使う気かよ。
あれの目標、今度も絶対に俺だろうなぁ・・・。
周囲の生徒はドン引きし始めてるよ、もうっ。
仕方ない、溜めに時間かかるっぽいし、みんなに被害がいかないようコートの隅の方に移動するか。
「燃え尽きろっ! ゴオオオォォォッシューーーーーットッ!!」
2メートル程垂直ジャンプしてから、オーバースローに構えて叫ぶバカ。
魔法で強化された筋力、さらに魔法の火炎を纏ったそれはまさしく弾丸の如く俺に迫ろうとしている。
うわぁ・・・あんなの食らったら死なない?
ん?
あのバカ、今回も魔法の制御がイマイチだな。
まあ、この程度の球速なら、横にさっと避けれるね。
ズガンッ!!
うひい、ボールが爆発しやがった。
その上地面が少し陥没してる。
「こらっ! パチモンの癖に避けんなっ! 当たっとけ!」
「避けんなじゃねぇバカッ!」
あんなもん受けたら火傷どころか大怪我するだろうが!
「何度も言うが、俺様はバカじゃねぇっ!! 神條様と呼べっ! パチモン崩れがっ!」
「お前なんざ、バカで充分だ。バカッ!」
「バカしか言えんのか? 語録の少ない低脳パチモン」
「学力テストは、お前と同点だろうが、バカ」
「いい気になるなよ、パチモン。俺様の真の実力を味わせてやろうか、ああぁん?」
「はぁ~っ、毎度毎度同じ事言いやがって。真の実力ってやつは何時になったら見せてもらえるんですかねぇ?」
「んだと、ゴラアァァッ!!?」
「やんのか、あぁっ!!?」
ただでさえ今日は気分が重いのに、なに喧嘩売ってくるかね、このバカは?
あぁ、でもいいや。
毎度毎度注意しても聞く耳持ってないし、今日はガツンと一発食らわせてやるっ!
ピピーーーーッ!!
「神條くん、高松くん、退場っ!!」
「「なんでっ!?」」
「今はドッジボールの授業ですっ! そんなに勝負がしたいならコート以外でなさいっ! 罰として2人共グラウンド5週っ!」
いきなりのホイッスル。
そして、退場。
さらにグラウンド5週の罰。
しまった。
バカの挑発に乗ってしまった。
「返事は?」
「「・・・はい」」
「それじゃあ、マラソンで勝負しなさいっ」
「チッ、運の良いパチモンめ」
「お前なあ、大概にしろよ」
ドッジボール集団から外れて、バカと一緒にグラウンドへ駆け足。
「はいはい、みんなぁゲーム再開よ」
「「「「「ほっ」」」」」
ゴメンよ、みんな。
授業の邪魔しちゃって。
悪いのは全部バカの所為だ、ちくしょう。
ドッジボール、楽しみだったのにぃ・・・。
5分後。
「ちょ・・・ゼーゼー・・・ま、待て、クソッ・・・・ゼハーッ」
「こちとら毎日走ってんだ。そう簡単に負けるかバカ。ほれ、お先に失礼っ、周回遅れさんっ」
「ゼーッ・・・ま、待ちやが・・・っれ、クソッ! ゼーゼーッ」
「誰が待つか、バーカッ!」
「ちくしょーめぇっ!! オッパイブルンブルンッ」
「? ついに・・・バカが壊れた・・・いや、始めから壊れてたような気が・・・」
何時も以上に訳の解らない事を言い出したバカをさっさと追い抜く。
正直、気持ち悪いです。
「総統閣下はお怒りなんだよーっ!! ゼーッ・・・俺はぁぁエースでぇ! 模擬戦なんだよぉっ!!」
「・・・あ~あ、ありゃもうダメそうだな」
俺は速度を上げてグラウンドを駆けた。
さっさとゴールして、ドッジボールに参加しよっと。
マラソン勝負は俺の圧勝で終わり。
コートに戻ったら、ゲームはもう終盤近く、俺は隅っこにて観戦。
なのはちゃんは、早々に狙われたらしく外野にポツン。
すずかちゃんとアリサちゃんがポイントゲッターとしてコートを動き回ってます。
大活躍だね、すずかちゃんとアリサちゃん。
それと、外野のBくんが汗だくになりながら内野へパスし続けている。
外野から内野へ攻撃はしないのだろうか?
不思議だ。
結果、俺のいたチームが勝ちました。
しかし、すずかちゃん、見た目と違って運動神経良いなあ。
あぁっ、そうそう。
マラソンのおかげで、この後のバカはやけに大人しかったな。
中田先生、マジ女神。
「し、死ぬぅ・・・・」
机に突っ伏すバカ。
足がプルプルと震えております。
あの程度のグラウンドを5週走ったくらいで死ぬタマじゃないだろ、バカ。
頼むから今日はずっとそうしててくれ。
まったく、普通に授業受けさせろよなっ。
「外野から内野へのパスを強いられたんだっ!」
それと、Bくんうるさい。
文句なら、俺じゃなくすずかちゃんとアリサちゃんに言え。
えっと、次の授業は社会か。
小学校の社会って面白いから好きだ。
ご近所で働いている人にお仕事について訊ねたり、町内を歩き回って地図を作ったりとか、ただ教科書の内容を覚える事以外をするからね。
俺が昨夜終わらせた宿題も面白いもので、自分の住んでいる家周辺の地図を作成するものだった。
授業の始めに宿題を集め、中田先生の授業が始まる。
黒板に簡単な地図を書き、肉屋や八百屋とお店を書き込む。
その中で先生が様々な職業を紹介していく。
授業が終わりに近付くと、次の授業までに各々が自分の好きな職業について調べるという宿題が出る。
『宿題多いな、私立』などと俺がぼんやり考えていると、最後に先生が一言。
「・・・将来なにになりたいか、今から考えるのもいいかもしれませんね」
う~ん、どうなんだろ?
薙刀道場の先生になっているのかなぁ?
それとも・・・。
6話・ドッジボール・完