一度書いてみたかったネタです。
よくある転生SSだと、他作品のメインキャラや強キャラの容姿で転生ってありますよね。
私がやってみたかったのは、主役そっくりな容姿にされたらどうなるか?です。
ま、探せばあるようなネタと思うけどね^^;
後悔はしてない(キリッ)。
第2話・転校初日
初日から『偽者』と呼ばれました高松このはです。
転校生である以前になんというか、クラス中から刺さる視線が微妙です。
しかも、俺そっくりな子がクラスに居る所為で、みんな凄く騒いでおります。
先生ヘルプ。
「はいはい、みんな静かに」
俺の気持ちが解ったのか、流石だ先生。
だが、全然収まってないけどね。
「はい、みんな静かにしましょうねっ。これから体育館で始業式ですから質問タイムとかはその時にねっ」
「「「「はーいっ」」」」
・・・・まあ、いいか。
一時間目は始業式。
校長やらなんやらの長い話を整列して聞いてる間も、視線が刺さる刺さる。
ついで、こっちをチラ見してコソコソ話す子も多数いる。
つ、辛い。
俺が何したっていうんだよ。
ただ、編入されたクラスにそっくりな子が居ただけだろうに。
結局、校長の挨拶くらいしか、耳に残らん始業式だったわ。
教室に戻ったら、動物園の珍獣並みにワイワイ囲まれて質問責めにあうんだろうなあ・・・。
憂鬱である。
で、教室に戻った途端質問責めに遭う俺。
「ねえねえ、高松くんって高町さんの親戚?」
「あんた、なんで男の子の制服着てんのよ!?」
上の2つが集団でしてくる質問とか泣ける。
そこは、前の学校の事とか趣味とか聞いて欲しい・・・。
「えっと」
「「「キャーッ、声も同じーーっ!!」」」
「いや、あのね」
「「「で、で、高町さんとはどういう関係?」」」
会った事もないそっくりさんの関係とか聞かれても困るわっ。
「はいはい。大勢で詰め寄ったら高町くんが困るでしょ。並んで並んで」
「高町じゃなく、高松です」
押し寄せてくるクラスメイトをまとめてくれたのは、金髪の可愛い女の子。
うん、見事名前を間違えてくれやがりました。
たぶん、気を引くための冗談だろうと思う。
頼む、そうであってくれ。
どういう訳か、彼女が代表しての質問責めになってる。
「で、あんた、一体何者?」
「ちょっと、アリサちゃん。その言い方はないと思う」
「にゃ、近くで見ると鏡を見てるみたいなのっ!」
上から金髪の子、紫の髪の子、茶髪のそっくりさんである。
3人もそうだけど、髪の毛がカラフルな子が多いクラスだな、おい。
「朝のHRで言ったように、高松このはです。ちなみにそこの子とは初対面」
「本当に?」
「ウソついて、どうなる」
何これ、新手のイジメ?
金髪の子、やけに気が強そうで困る。
転校早々口喧嘩とかしたくないよ、俺は。
「悪い、ちょっと通してくれ」
「あ、神條(しんじょう)くん」
カラフル3人娘と話していると、生徒の人垣を掻き分けて、これまた凄い子が俺の前に現れた。
金髪の女の子同様、完璧に日本人離れした西洋風の顔立ちの男の子だ。
背が高く、碧い瞳に白い肌、背中にまで届く金色の長髪と、悪目立ち過ぎだろお前。
最近の小学校には、こんな濃い人間が居るのか?
凄過ぎ。
「それは、なのはの物だ。なのはに返せっ!」
「は?」
「にゃ?」
いきなり指を突きつけられて、今度は『泥棒』扱い?
どうなってんの、この小学校?
訳が解らん。
「あんた、何割り込んでんのよ!?」
「私、なんにも取られてないの」
「いきなりどうしたの?」
「やあ、今日も可愛いね、なのは、アリサ、すずか。いや、なに。このパチモンのなのはからレイ――いや、ペンダントを取り返そうとしただけだよ」
「「「「はあ?」」」」
またまた訳が解らん。
判ったのは、3人娘の名前と濃い男の子の名前ぐらいだ。
「さっさとなのはにペンダントを返せっ! このパチモン!」
「何言ってんだ、おま――いや、神條だったか。このペンダントはお婆ちゃんから貰ったモノだ。なんで初対面の・・・えっと、なのはちゃんだっけ? 彼女から盗った事になるんだ? つーか、誰がパチモンだっ!」
「そ、そうなの。私、このはくんになんにも取られてないの」
なんなんだ一体?
俺のライがなんで始めて会った子の物だって言い出すんだ?
???
ますます解らん。
それに、この神條って子なんかムカツクわ。
俺が一体何した?
「いいから、さっさとなのはにペンダントを返せっ!」
「断る」
訳が解らん事を言いながら、俺の首にぶら下がっているライに手を伸ばしてくる神條。
それを椅子に座りながら器用に避ける俺。
「避けるな!!」
「フッ、甘い、甘い」
「なのはと違って運動神経はいいみたいね」
「うん、このはくん凄い」
「・・・なんか自分が襲われてるみたいで、気分悪いの」
恭子お婆ちゃんから鍛えられた俺にとって、神條の動き等とってもスロウリーだ。
ってか、誰も神條を止めないのか?
これ、なんてアウェー。
大体、俺もなのはちゃんもはっきりとライは俺の物だと言ってるだろうに。
なんでムキになりますかねぇ。
「くっ! 器用にちょこまかと。なのはと同じ顔じゃなかったらぶっ飛ばしてやるのにっ!」
「いい加減、誰かこのバカ抑えてくれよっ!」
「「「このはくん凄い器用」」」
結局、先生が教室に来るまで、椅子に座ったまま神條の手を避け続ける俺であった。
イジメか、イジメなんか?
「・・・・・・・疲れた」
グッタリと机に身体を預けているバカ。
うん、こいつはもうバカでいいや。
神條くんと呼ぶ必要なし。
「あんた、よくやったわ(ボソボソ)」
俺の近くに座っていたアリサちゃんがバカの姿を上機嫌に眺めながらこちらに礼を言ってきた。
なのはちゃんとすずかちゃんも『いい気味』と呟いてるように見える。
あのバカ、女の子に嫌われてやんの。
ざまーみろである。
何事もなかったかのように中田先生は、二時間目をスタートさせる。
「それじゃあまずは、・・・高松くんの事も気になるでしょうけど、クラス替えもあった事だし、みんなで簡単に自己紹介をしましょうね」
「「「「は~い」」」」
「じゃあ、まずは、廊下側の一番前の子から・・・」
・・・あぁ、ようやく普通の学校っぽくなった。
良かった。
さて、次は俺の番だ。
さっきは何故かスベッたみたいだし、今度はちゃんとやるぞ。
「じゃあ、次はお待ちかね高松くん」
「はいっ」
突き刺さる好奇心の視線に耐えながら、俺は立ち上がった。
「渦巻小学校から転校してきた高松このはですっ! 趣味は食う寝る遊ぶ。前に住んでいた渦巻市では薙刀をやってました。ちなみにあそこに座っているなのはちゃんとちょっと似てますが、赤の他人です。みんな今日からよろしくねっ!」
「「「よろしく~っ」」」
パチパチパチ・・・。
ほっ、拍手付きで迎え入れてもらえた。
良かった。
うん、良かった。
途中で『ちょっとぉ?』と聞こえたが無視。
似てる理由はこっちが聞きたいわっ!
俺は知らん。
さてさて、何事もなく自己紹介も終わり、クラスの空気も徐々に柔らかくなっていった。
新たなクラスメイト達の自己紹介後、俺に対する質問タイムが設けられる。
幸いな事に、俺に対する質問責めも先生が居てくれたおかげで10分程の簡素なものでスムーズに済んだ。
二時間目が終わる頃にはクラスに馴染めそうな雰囲気になっていた。
中田先生、マジ女神。
三時間目に突入。
え?
間の休憩時間はどうしたかって?
トイレに逃げた。
うん、素早く人混みに潜り込んで逃げ隠れた。
俺は悪くない。
悪いのは、訳判らんイチャモンつけてくるバカだ。
「まずはこの時間割のプリントを・・・」
中田先生が3年生から始まる授業について、軽い説明を始める。
小学生相手だから超解り易い。
あぁ、明日から授業が楽しみだ。
前の人生はちゃんと勉強しなかった分、今度は頑張るぞぉっ!
「それじゃ、今日やっていくことはこれくらいかな。よし、みんな席替えするわよ」
それを聞いて、クラスから歓声が上がる。
席替えって新学期最初のイベントだから盛り上がるなあ。
しかし、あのバカの力の入れようが半端ない。
よっぽど座りたい場所でもあるのか?
「クジを作っておいたからみんな順番に引いてね」
中田先生がそう言った後、みんなそれぞれクジを引き始める。
先生はそれを見ながら、クジの番号を書かずに席順を黒板に記入した。
全員がクジを引き終えてから、番号を書くつもりなのだろう。
「みんな、クジを引いたわね。それじゃ、番号を書くから、先生が書き終わってから移動を始めてね」
カッカッカッカッ・・・・。
チョークの奏でる小気味良いリズム。
喜ぶ声と、残念そうな声。
俺の引いた番号はまだ書かれていない。
なんかワクワクするね。
「はい。みんな、番号を確かめたかな? それじゃあ、移動開始ぃ」
えっと、俺の番号はっと・・・。
ありゃりゃ、窓側の一番後ろの席か。
夏場は日差しが辛そうだなぁ。
まぁ、いいや。
さっさと移動するか。
「にゃはは、よろしくね、このはくんっ」
隣にそっくりさんがいらっしゃいました。
「あんた達、並べると本当っ双子の兄妹みたいねっ」
前は気の強い金髪さんか。
「アリサちゃん、前向かないと」
斜め前は大人しそうな紫頭。
仲良し三人組の女の子達に囲まれちゃった。
別に文句はないのだが、先程からあのバカがこっちを睨んでなさる。
これは目を付けられたか。
・・・・どうしてこうなる?
「あ、うん。よろしくね。・・・・・はぁ」
ため息が出た。
そんなこんなで見事厄介ごとに巻き込まれそうな席についた俺。
あのバカの視線と一緒に、なのはちゃんと俺を見比べる好奇心の視線がやたら突き刺さる状況である。
早く帰りたい。
お隣さんも俺の気持ちが解るのか苦笑している。
斜め前のすずかちゃんとふと視線が合う。
『お気の毒ですね』と目が語っているような気がした。
助けてくれ。
学校が終った瞬間、すぐさまあのバカがこっちに向って来た。
仲良し三人組は俺を生け贄にするつもりなのだろう。
刹那のアイコンタクトを発動させて、3方向に散ろうと動き出す。
バカの嫌われ度すげーな。
「おい、パチモンっ!」
「なんだバカ?」
あぁ、早く帰りたい。
なんで転校初日から絡まれなきゃならんのだ。
怒りで握った拳がプルプル震える。
「話がある。付いて来いっ」
えらそうなヤツだなぁ。
まぁ、こっちに背中向けてくれたから好都合だわ。
「ていっ!」
「んがっ!?」
バカが廊下側へと身体の向きを変えた瞬間、俺はバカに当身を食らわせた。
そして、気絶するバカ。
さっきの攻防戦での俺の動きを忘れてんのか?
やっぱ、こいつバカだわ。
「よいしょっと」
俺はバカを適当な席に座らせてから、ゆっくりと教室を出た。
お婆ちゃんから体術も習ってて良かったな。
途中、残っているクラス達から『えっ?』って聞こえたけど気にせずに出た。
廊下を歩き、階段を降り、下駄箱まで行くと、仲良し三人組がアタフタしながら靴を履き替えていた。
いや、訂正が1つ。
なのはちゃんだけがアタフタしていた。
ゴンッ!
あ、こけた。
「だ、大丈夫なのはちゃんっ?」
「にゃはは、だ、大丈夫なの」
「なのはもすずかも早くっ! 後で手当てするから!」
「う、うんっ!」
下駄箱におでこをぶつけたのか・・・うん、痛そうだね。
俺は靴を履き替え、仲良し三人組の横を通り過ぎ・・・・。
「なんで、あんたがここに居るのよっ!」
・・・ようとしたら、何故かアリサちゃんに捕まった。
「帰るとこだけど?」
「アイツは?」
「ん?」
「神條よ!」
「あぁ、あのバカなら気絶させた」
「「「え??」」」
「んじゃ、俺帰るね。また明日」
「待ちなさい」
今度こそ帰ろうとしたら、仲良し三人組に囲まれてしまった。
「何?」
「アイツは追って来ないのね?」
「うん」
なんだ?
三人揃って安堵の表情って。
あのバカ、そこまで嫌われてんのか?
「「「よかったぁ~(なの)」」」
何やったんだ、あのバカ?
まぁ、どうでもいいや。
さっさと帰ろ・・・。
「「「待って(ちなさい)(なの)」」」
「今度は何?」
今日はなんだ?
イチャモンつけられまくる日なのか?
ブルーな気分になるよ、まったく。
「へぇ~、そんな事もできるんだ。やるわね」
「でも、暴力はあんまりよくないと思う」
「すずかちゃんの言うとおりなの」
何時の間にやら、仲良し三人組に捕まって一緒に下校開始です。
まあ、いいか。
「いや、俺を生け贄にしてダッシュで逃げた君らにアレコレ言われたくないんだけど・・・」
そう言うと、三人共速攻で目をそらしやがった。
確信犯だ、この子ら。
「わ、私は褒めたんだから良いわよね」
「「アリサちゃんズルイ(なの)」」
仲良いな君ら。
「おほん。まぁ、丁度いいわ、このは。あんたの歓迎会してあげるから、後で翠屋まで来なさい」
「えっ!?」
「ダメだよ、そんな急に誘っちゃあ」
「そうなの。ちゃんとお話して誘わないとダメなの」
なんかアリサって子凄いな。
クラスメイトをまとめるリーダーシップもあるし、後は・・・気が強いかな。
今日会ったばかりだけど、なんていうかこの子には今後も振り回されそうな気がする。
うぅ、女の子に弱いヘタレな俺。
まあちょっと寄り道するぐらいならいいか。
「いいよ」
「ほら、やっぱり急だから・・・」
「「「いいの?」」」
仲良いな君ら。
羨ましいよ。
「いいよ。でも、最近引越してきたばかりだから、道がよく解らないんだけど」
「それならなのはが案内するのっ!」
「そうね。私もすずかもお迎えが来るから、後で翠屋に合流するわね」
「うん」
学校を出てから数分後、アリサとすずかは送迎のお車で一旦お帰り。
今はなのはちゃんと一緒に下校中です。
翠屋とやらに行く事については、家に帰ってからお母さんに連絡すればいいか。
「すげー、ブルジョワだ、あの2人」
「うん、2人ともすっごく大きなお家に住んでるの」
「すげーな。リムジンとか間近で始めて見た」
「車の名前はわからないけど、アリサちゃんとこかな?」
「うん。それに本職のメイドさんも始めて見た。ビックリ。しかもすげー美人だった」
「すずかちゃんとこのノエルさんなの」
「すげー、私立の学校すげー」
「にゃはは、このはくん『すげー』ばっかり言ってるの」
「いや、すげーわ。俺そっくりのなのはちゃんもすげーよ」
「にゃっ!? アリサちゃんとすずかちゃんと違って、す、すごくないの、なのははっ! 平凡な小学3年生なのっ!」
「いや、すげーわ。声までそっくりだし・・・」
「・・・声?」
「うん」
「ほかは・・・ないの?」
「ない」
「・・・・」
あれ?
なんか悪い事言ったか、俺?
なのはちゃん、急に静かになっちゃった。
む、話題を変えよう。
「ところでなのはちゃん」
「な、なに?」
「翠屋って何屋さんなの?」
「にゃっ!?」
「にゃ? もしかして・・・・ペットショップ?」
「違うの。喫茶店なの!」
「ふ~ん」
「知らないの、このはくん? 結構有名なの」
「知らん。最近引越してきたばかりだって言ったろ」
なんだろう、凄く話し難い。
なのはちゃんはまったく悪くないんだけど、頭のネジが緩んだ自分と話してるみたいで、凄く話し難い。
同属嫌悪?
いやいや、それはあんまりだな。
偶々、顔と声と名前が似ているだけだ。
なのはちゃんは悪くない。
でも、良い子だと思うんだけど付き合い難いなあこの子。
俺よりも『魔力』持ってるんだもん。
あんまり近付きたくないんだけど、凄い気になる子ではある。
ついでにあのバカはなのはちゃん以上の『魔力』持ってるようで、なのはちゃん含めて転校早々不安になるよ、まったく。
まあ、今日のところはこれ以上何かしかけてくることもないだろうが。
喫茶店でコーヒーでも飲んでリラックスタイムといきましょうかね・・・。
ん?
ホイホイ誘われて翠屋に行くのってヤバくね?
ど、どどど、どうしよう?
誰か助けて下さ~いっ。
2話・転校初日・完