予想通りの展開だったでしょうか?
それとも・・・。
さあ、まだまだ続きますよ。
ZEROの使い魔の世界に転生しました
第13話 そんなつもりじゃ・・・
もしもーし?
おーい?
うがああああっ!!!
返事してよおおっ!!
なんで急に黙るんだよ、火の精霊っ!!?
あう~~~~っ。
「よっ。待たせたな」
待たせたじゃないっ!!
ボクの身体で何をする気ですか!?
「手助けだよ。まあ、もう終わっちまったけどな」
へ?
「感謝しろよ。お前さんの面倒ごとを1つ解決してやったんだからな・・・」
はあ。
それは態々ありがとうございます。
「ん~っ、あんま感謝されてねぇなぁ。まあ、いいや」
よく判りませんが、何か良い事をしてくれたんですね?
「おう。穢れた『単なる者』毎、森を焼いてやった」
へぇ、そうなんです・・・・ええええええっ!!?
「お前さんの友達は燃やしてねぇから安心しな」
ほっ。
「あの森についちゃあ、こっちも用があったもんでさ。ついでってヤツだ」
そうなんですか?
ありがとうございます。
「礼はいらねぇよ。手助けしてやる気なんざ、元からなかったんだけどよ。お前さんに今死なれちゃ困ると思ってしただけだからな」
助けてくれるんですか?
ボク、まだ死にたくないんですよ。
「よしよし、んじゃあよ。お前さんの記憶にある知識・・・『ゼロの使い魔』だったかな? そいつの知識と、お前さんの知恵を貸せ。それでお前さんの命を助けてやる。どうだ?」
え?
なんで、ボクの記憶を読めるんですかっ!?
つか、勝手に覗くなっ!!
「悪ぃ悪ぃ、つい見ちまったんだよ、許せ」
はあ・・・。
どうしよう・・・。
「なあ、悩むのはいいけどよ。早く答えてくれや。でねぇと、そろそろお前さんの炎が消えそうなんだよ」
ええええええええっ!?
教えますっ!
教えますからっ!
「解った。んじゃ、“土”と“水”、それと“風”呼ぶから我慢しろよ」
はあ?
それって、4大精霊そろい踏み!?
「そうだよ。ちーと頭痛するかもしんねぇが、気をしっかり持てよ。でないと、助かる前におっ死ぬぞ」
うわあ、怖い事をさらっと言う。
ん?
ぐはっ!
何か頭の中に入った感触ががが・・・。
「我を呼んだか、“火”よ?」
「おう。“土”の。元気か?」
「あまり元気ではないな。我が領域に“風”がドンドン入り込んでくる」
ううう、頭痛い。
「おぉ、よく耐えたな。後2柱来るから我慢しろよ」
「この『欠けし者』が我が悩みを解決するのか、“火”よ?」
「そうだ。おい、お前さん、“土”に『ゼロの使い魔』の知識を見せてやれ」
見せてやれって、そう簡単に・・・。
あだだだだ。
痛いよ!
「見せてもらうぞ、『欠けし者』」
痛いってばっ!!
つうか、言う前に勝手に覗いてるでしょっ!!
ボクのプライバシーは守られないのっ!?
うひいぃっ。
冗談抜きで痛いです。
「ふむ。我が領域に溜まり続ける“風”が、“大隆起”なる天変地異を起こすか。流石にそこまでは予想しておらなんだ」
「俺様の言った通りだったろ? どうするよ、“土”の?」
「信じ難いが・・・“水”の事の記憶もかなり真実味があるようだ。“火”の話、信じよう。我が領域が滅茶苦茶になる未来は歓迎出来ぬ」
「“土”のヤツがお前さんを信じるってよ。さあ、知恵を出せ!」
うひゃあ、凄い無茶振りですよ、火の精霊さんっ。
ああ、こんな事になるなら、『ゼロの使い魔』の事、忘れないように紙にでも書いて残しとくんだった。
えっと、理由は思い出せないけど。
確か、ハルケギニア大陸の地下に年々“風”の力が結晶化して風石が出来るんですよね。
それで、原作だと確か・・・ああ。
火竜山脈で最初の“風石の暴走”が起こるんだっけ?
ハルケギニア大陸のアチコチがアルビオン大陸みたいに空に浮くんだよ!
でも、アルビオン大陸みたいに風石が安定する訳じゃないから・・・。
そっか、天変地異か。
地面が浮いたり落ちたりするんだ。
大惨事。
「どうした? 思い出したのなら、早く知恵を出すがよい。早くせぬと、『欠けし者』の命運が先に尽きるぞ」
ぐはっ!
鬼っ!
精霊だけど、鬼だっ!
「お邪魔するわね」
「よう、“風”の。元気か?」
「あんた何時も元気ね? 羨ましいわ。こっちは、ドンドン弱って大変なのに」
ぎゃぼおおおっ!!
また、精霊の追加ですか、そうですか?
おーうおう、痛いぃ。
「何か用か、“火”よ? 我はお前を好まぬ」
「固ぇ事言うなって、“水”の」
あばばばばっ、超痛い!
頭壊れる!
割れるうううっ!
よ、4大精霊ががが、頭のにゃかあっ!?
「随分と騒がしい『欠けし者』だな? おや? ・・・・ほう?」
痛い痛い痛い痛い痛いいいぃっ!!!
また、勝手に記憶読んでるぅぅっ!!!
「我が秘宝『アンドバリ』の指輪が盗まれるとな?」
うわっ!
マズイ。
水精霊に未来を知られちゃった!
これじゃあ、原作の流れが変わるかもっ!
「馬鹿馬鹿しい。我がそう易々と奪われると思うとは・・・愚かな」
「へぇ? 私の力ってば、地下に潜って結晶になってるんだあ?」
同時に覗かないでっ!
痛いんだってばぁ。
「それぐらいにしておきな、“水”と“風”。『欠けし者』が壊れちまう」
「よかろう」
「もうちょっと覗かせてよ?」
「やめとけ」
「は~い」
あううううっ。
「・・・で、早く知恵を出すがよい」
マイペースですね、土の精霊さん。
「どうした?」
うああ、容赦ない。
土なら自力で風石を地上に出せばいいじゃないですか?
何で悩むんです?
「ふむ。それは簡単な事だ、『欠けし者』よ。“風”の力ゆえ、我の力が及ばぬのだ」
属性の関係で、地面に埋まった風石を地表まで運べないのですか?
「そうだ。ゆえに困っておる」
「そうなのよ。私も困ってるの」
じゃあ、地面に住むモグラさんとか大ミミズさんに手伝って貰うのはどうです?
「それは既に行なった。だが、地に住む『単なる者』では運べない程大きい物もあるし、彼の者達では崩せない硬い岩盤もあるのだ」
ふむう、難問ですねぇ。
水の精霊さんなら、その岩盤に干渉できます?
「ほう、我の力を疑うか?」
いえいえ、そう怒らないで下さい。
今、理由を言いますから。
「よかろう。申せ」
はい。
どんなに硬い物でも、目に見えない隙間があります。
石だろうが鉄だろうが、水に長い年月浸せば脆くなるでしょう?
「そうか? ふむ・・・確かに、言われてみればそうだな」
「どうなのだ、“水”よ?」
「可能だ」
おぉっ、良かった。
「やるじゃねぇか、お前さん。流石、俺が見込んだ『欠けし者』だぜ」
いや、いっその事、火の精霊さんが溶岩の熱で溶かせば済むんじゃないかと・・・。
「おう、それだ! 別に“水”に頼む事じゃねぇなあ」
「なんだと?」
わああっ、待って待って。
ボクの中で喧嘩しないで下さいっ!
範囲が広いんですから、“火”と“水”で手分けしてやれば良いじゃないですか。
「おっと、すまねぇ。確かに、お前さんの言う通りだ」
「“火”は短気だからな」
「おい、“水”の。お前も同じだろうが」
「そうか?」
あのぉ~?
「なんだ、『欠けし者』?」
「何、何?」
ボクは助けて貰えるんでしょうか?
「おぉ、忘れてた!」
忘れないで下さいっ!
アイデア出したら、ボクの散りそうな命を助けてくれるんでしょっ!?
「それで、我を呼んだのか、“火”よ?」
「おう。それそれ、ちいと悪ぃけど、この『欠けし者』の命をパッパッと救ってくれ」
「よかろう。だが、我の力では『欠けし者』の身体が狂う」
「“水”よ。我も力を貸そう。『単なる者』が穢した地を浄化しようとしたのだからな」
「私も貸すわね。力と眷属が戻ってくる知恵を出したんですもの」
おおっ!
なんか自分の事なのに凄い事になってる!
ありがとうございますっ!
4大精霊様っ!!
「もっと敬え」
「それぐらいにしておけ、“水”」
「早くしないと、本当に死ぬわよ、この『欠けし者』」
「おいおい、皆頼むよ」
・・・・お願いします。
「では、まずは我が失った身を補おう」
「私は息吹を与えるわね」
「俺は炎を灯すぜ」
「我は流れを正常にしよう」
ふう、助かっ・・・・あばばばばばばっ!!!!?
んぎゃああああっ!!!
痛いっ!?
痛いよっ!
滅茶苦茶痛いいいいぃっ!!!!
「「「「我慢しろっ!!」」」」
んきゃあああああっ!!!
全身引き裂かれそうになる痛みに襲われ、ボクは意識を手放すのでした。
痛みを伴う治療なら先に言って・・・ガクッ。
「失礼な『欠けし者』だな」
「弱いわね」
「まあ、そう言うな」
「しかし、『欠けし者』の知恵のおかげで、我らは救われた。傷を癒すだけでは礼も足らぬ。後で何か贈らせよう」
「“土”は太っ腹だな」
「当然だ」
「よかったな、お前さんっ」
・・・・。
・・・。
・・。
「んん~~~っ」
フカフカの羽毛布団に包まれて寝てるみたいに、なんか凄く気持ちいい。
ああ、肌触りも良くてフカフカだあ。
ちょっと血腥いけど、スリスリしちゃう・・・。
ん?
「起きたか、ザザ様?」
「んぎゃああっ!!」
目を開けるとライオンのドアップ。
思わず叫ぶボクでした。
「大丈夫ですかっ、ザザ様!?」
すぐ側には、マンティコアの子供達に埋もれたボリスさんの姿が。
何、この状況?
って言うか、モコモコに埋もれて羨ましいぞ、ボリスさんっ!
「モコモコ・・・。おや? マローダー」
「起きたか、ザザ様?」
「うん」
ボクの身体は、マローダーの翼で優しく包まれていた事に気付きます。
肌触りがよくて、頬をスリスリした場所は、マローダーの鬣のようですね。
予想外のフカフカ感だったなあ。
それはさておき、身体を起こします。
ヒョイッと、ボクは立ち上がりました。
「あれ? なんか変だな?」
「どうしました?」
「どうした、ザザ様?」
身体が凄く軽い。
身体中にある古傷や打ち身の痛みもまったく感じない。
頭痛もしない。
立ち眩もしない。
偏頭痛もない目覚めなんて、何年ぶりだろう。
4大精霊がボクの身体をちゃんと癒したからでしょうね、これは。
「治ったあぁっ!」
「「っ!?」」
ボクは万歳ポーズをしました。
「まっ、前を隠して下さいっ! はしたないですぞ、ザザ様っ!」
「おやぁ?」
立ち上がるとボクは丸裸でした。
「・・・・と、まあ、そう言う事でして」
「はあ。相変わらず無茶しますね、ザザ様は」
「ふふふ、流石はザザ様よ。火の精霊殿だけでなく、まさか4大精霊殿との交渉をするとはっ!」
着替えてからボク達3人(2人と一頭)はこれまで起こった事を話し合いました。
流石に“大隆起”の事は内緒にしてます。
トンデモ話ですからね。
「ボクの身体を操った火の精霊さんが、森を全部焼いてしまわれたんですねぇ」
「ええ、ザザ様とマローダー殿の話からすると、そうなりますなあ」
「大いなる業(わざ)であった」
ボク達の目には焼け野原を通り越して焦土と化したトゥルズ領が映ってました。
これ、超ラッキーじゃね?
亜人達も灰燼に帰してますよ。
任務完了ですね。
「あ、そうだ!」
「どうしました?」
「どうしたのだ、ザザ様よ?」
「なんで、マローダーまでボクを様付けにしてるの?」
ボリスさんが2人に増えたみたいで、なんか居心地悪いんですよ。
「決まっておる。ザザ様。吾は火の精霊殿より、汝の守護を命ぜられた。それに吾が一族のため、命を賭して戦ってもくれた。汝は、吾が一族に新たな土地をも約束した。吾等一族、汝のために仕えるのは当然であろう?」
「いやいやいや、なんか話がオーバーに飛んでますよ、マローダー?」
「そうか?」
「仕えてくれるのは嬉しいけど。第一気持ち悪いっ!」
「なんとっ!!?」
あっ、マローダーが落ち込んだ。
「あのね、マローダー」
「うぬうぅ、では何とお呼びすれば良いのだ?」
「ザザでいいよ」
「いやっ、それでは吾の立場が!? それに汝は吾等の恩人でもあるのだぞっ!?」
「友達でしょ? ボク達」
「なっ!? ザザ様っ!?」
なんで、そこで驚くのボリスさん?
って、マローダーを見ると、なんか泣いてるし・・・。
火の精霊さん、マローダーに何言いやがりましたかねぇ?
「まっ、まぁ、なんですな。驚きの連続でしたが、アンリエッタ様からの任務も無事完了で目出度いものです」
「そうだね、ボリスさん」
「でも、予定だと、マンティコア達に働いてもらう予定でしたが・・・」
ボリスさんがマローダー達をジト目で見ています。
荷物運びの手伝いの対価に、新しい住処を提供する約束でしたもんねぇ。
まあ、30頭ものマンティコア達を連れて帰るのは、ボリスさんも流石に抵抗あるんでしょう。
「でも、マローダー達は亜人退治の手伝いをしたんだし、ガスコーニュ領の森を提供するのは当然でしょう?」
「ですが、流石に成獣19頭と子供11頭は多いような気が・・・」
「吾等一族、吾が友ザザに仕えると決めたのだ。どこまでも従いてゆくぞ」
マローダー達は、ボクに付き従う気満々。
嬉しいような、面倒のような。
でも、約束は約束。
面倒見ようじゃないですか。
「マローダー達はウチで働いてもらおうか?」
「ええっ?」
何故嫌そうな顔をする、ボリスさん?
「マローダー達、空飛べるんですよっ。騎獣として働いてもらうなら、父上だって彼らの雇用を認めますよ。それにボクの目が届く所に住むんですから、面倒が少なくて済む」
「そ、それは確かにそうですが・・・」
「何故、ボリスは吾等を嫌がるのだ? 子供達も汝に懐いておるのだぞ?」
「う~ん・・・・はぁ、参りました。ザザ様の思うようにして下さい」
ボリスさん、折れた。
これで、意気揚々と帰れま・・・・。
あぁ、流石にマンティコア30頭をいっぺんに連れての移動は問題あるなあ。
それに、火の精霊さんが手伝ったとか、上に報告できないぞ。
「ボリスさん?」
「はい?」
「鷹はまだ居ます?」
「ええ、まだ小屋にいますよ。迎えでも呼びますか?」
良かった。
ボクが寝ている間に、連絡用の鷹便を送ってなくて。
「いえね。ちょっと小細工をしておこうと思いまして」
ボクはニッコリ笑いました。
でも、ボリスさんはちょっと引いてます。
何ででしょう?
「何か企みましたね、ザザ様?」
「はいっ」
ボクはリッシュモンを牽制するための小細工を考えたのでした。
ついでに、命令書にサインした姫様へのちょっとした悪戯も加えます。
思い付いた事をボリスさんに説明すると、さらに引かれました。
「よくそんな事思い付きましたねぇ?」
「ダメでしょうか?」
「いえ、確かに。ザザ様の言う通りの事は予想されますが、そこまでは深読みしませんでした」
「でしょう?」
「ええ」
「で、ボリスさんの意見を聞きたいんですけど?」
ボリスさん、踞って考え込み始めました。
その間、ボクとマローダーはゴロゴロ戯れます。
ええ、当然戯れますとも。
スキンシップは大事ですからね。
「・・・解りました。その案でいきましょう」
お願いですからボリスさん、もう少し長考して下さい。
5分も考え込んでないじゃないですか。
まあ、いいか。
作戦開始です。
<続く>