えっと、1話の続きです。
ちょっと長いので二分割します。
シーメイル好きな菊池真人(きくち・まこと)は、ある日不思議なデジタルカメラを入手した!
それは、撮影した被写体に変身できる特殊な『着ぐるみ』を生み出すのだ!
強面40男の真人は、絵里に変身して女性の自慰行為を体験する。
さあ、これからどうなるっ?!
オセのカメラ
第二話 闖入者
「ふぅ、もうこんな時間かぁ・・・」
真っ暗闇となった部屋の天井を見上げて呟く。
絵里の身体を弄んだオレは、身体をゆっくり起こして電灯を点けた。
「・・・しかし、冗談抜きで凄い経験をしたもんだ・・・・おっと」
歩きだそうとして、少しよろける。
別人の身体で、しかもオナニーの後だ。
普段と違う感覚に、ふらついてもしようがない。
「?・・・・あらら、お股がグショグショだ」
太腿の内側に流れるものに気付き、指で触れるとそれは愛液だった。
股間のお毛々もグッショリと湿っており、先程のオナニーでかなり感じたんだなと、改めて関心してしまう。
ティッシュで内股の部分をそっと拭き取る。
Jrが付いてない股間を拭くのは、なんだか変な感じだ。
それにかなり汗をかいたので、身体が少しベタつく。
「んふふっ」
汗を流そうと、オレはバスタオル片手に浴室へ向かった。
シャワーを捻り、しばし待つ。
ウチのシャワーは、最初は冷たい水が出るからだ。
しばらくすると、熱いお湯が出てきた。
「ん? ちょっと熱いな。あれ? いつもならヌルい設定なんだけど・・・」
絵里の身体だと熱く感じるのか?
温度を調整して、いつもの癖で頭からシャワーを浴びる。
「ん~~~、気持ちいい~~~」
シャンプーを使って髪を洗い始める。
「おっ? おあっ・・・・ぐはっ、しっ、沁みるぅぅっ」
男性用シャンプーだったから合わなかったのだろう。
途中からヒリヒリしだしたので、すぐにシャワーで洗い流す。
リンス?
ウチにはないよ~ん。
なれない女の体に戸惑いながらも、ボディーソープで体を洗う。
膨らんだ胸と何も触れない股間に再度どぎまぎした。
体を洗い終えると気分がスッキリ。
部屋に戻って体を拭きながら、鏡を覗いた。
化粧なしでも絵里は美人だ。
眉毛が薄い気がするのは、普段は化粧で書いてあるんだろうなぁ。
そんな事を思いつつ、今度は自分で自分に微笑んでみる。
今までのオレは女性に、こんな風に微笑まれたことはなかった。
オレの強面に大抵は、ドン引きだからだ。
だから、オレは少し嬉しくなった。
恋人のように微笑んでくれる存在が皆無だったから・・・うぅ、自分で言ってて辛い。
「んふふ~~~~っ」
少し後ろに下がって、裸の体を鏡に映してみた。
絵里はスタイルがいい。
ペニスがついていればもっと良いだろうなとは思うが、まあこれはこれで・・・・。
カリッカリッ・・・
小さな音が聞こえたような気がした。
が、無視して女体観察に没頭するオレ。
「ん~~~、ちと乳首が黒いなぁ。おっ、さっきは気が付かなかったけど胸と胴の合間に汗疹があるわ。ふむふむ、オッパイ大きいと、こんな苦労もあるのねぇ。でも、このポヨンポヨンって揺れる感覚ってオモロイなぁ・・・」
手のひらでオッパイを上下に揺らして遊ぶ。
うむ、エロイな。
「あっ?!」
鏡を見ながら胸を弄んでいる最中、オレはハッと気が付く。
同時に背中に冷たい汗が流れた。
「忘れてた・・・。どうやって脱ぐんだ、これ?」
肩越しに鏡で確認する。
背中のファスナーは消えたままだ。
オレは鏡の前で慌てた。
もし脱げないとしたら、明日から仕事にいけないじゃないかっ!
いやいや、どう生活したらいいんだっ?!
背中に両手を回し、皮膚を抓んで、左右に引っ張ってみる。
「痛っ! なんだ? 完全にくっついちまってるのか、これ?! 皮膚の下に隠れてると思ったのにっ! うわっ、冗談抜きでファスナーのラインが無いっ! 消えてるぅっ!!」
いっそ、刃物で切れ込みを入れるか?
脱がないと、明日から超困るっ!
マジ困るっ!
超ヤベー。
と、わきゃわきゃ慌てふためいていると、
「妄想と狂気を与える者オセの名において命ずる、脱げよ・・・と、唱えながら念じればいいニャア」
と、後ろから助言があった。
「おっ? そーなんか? よしっ! もーそーときょーきをあたえるもの御背のなにおいてめいずるー、脱げよっと」
ポンッと消えていたファスナーが復活した。
と、同時にファスナーが触れてもないのに勝手に開き始める。
「おっ~~、もがっ?!」
突如視界が真っ暗になり、ボコンッとオレの身体が膨らんだ。
身体全体にゴムが張り付いたみたいな圧迫感に襲わる。
ついでに息が出来ない。
オレは慌てて頭の部分を剥がした。
「ぶはっ!」
そして、鏡には怪しいゴムスーツ姿のブサイクなオレが映っていた。
「ふう、助かったぁ・・・」
「よかったニャア」
「いやあ、助かった。一時はどーなる事かと・・・・・あれ?」
って、オレは誰と会話してるんだ?
振り返っても、人の姿はない。
オレは周囲をキョロキョロと見るのだが・・・。
「こっちニャっ!」
「どっち?」
「下ニャ」
「おうっ、これはご丁寧に・・・おわっ?!!」
視線を下げると、座布団の上に一匹の子猫が寝転んでオレを見上げていたのだ!
お目々がクリクリッと可愛いアメリカンショートヘヤーみたいな猫だ。
はて?
声の主はともかく、何時の間に猫が入り込んだのだろうか?
「なんで、猫が? いったい、どこから入って来たんだ?」
「ベランダからニャ。ノックしても開けてくれニャいし、大変そうだったニョで、勝手に開けて失礼したニャ。例え2階に住んでても、鍵はかけた方がいいニャ」
「むっ、それは油断した。ご忠告ありがとう」
「どういたしましてニャ」
「さて、どうやら性質の悪いドッキリに嵌められたようだ」
「ニャっ?!」
オレは子猫をひょいっと摘み上げると、少し開いたベランダをもうちょっと開けてから、ピョコッと首を出した。
誰もいない・・・・。
「もうちょっと優しく持ち上げて欲しいニャ」
「・・・・・・」
ベランダから首をひっこめてから、オレは子猫を両手で抱っこするように持ち替えた。
きっと小型のスピーカーを仕込んでるに違いないっ!
「ちょっと、くすぐったいニャ」
「・・・・マイクはどこだ?」
子猫は首輪が付いていない。
生まれたままの姿だ。
巧妙に隠してあるのか?
オレには、このニャンコが喋っているように感じる。
柔らかい毛皮に指を這わせて調査開始。
「マイクは知らニャいけど、マイケルって友達なら3丁目を徘徊してるニャ・・・ニャアっ?! くすぐったいニャっ!」
もふもふっ
もふもふっ
むむっ、もぞもぞジタバタする様が可愛いじゃないかっ!
「ニャハハッ、ニャハハッ」
「この悪戯をしかけた飼い主を聞くがよいっ! 正直に真相を告げないのであれば、このニャンコが笑い死ぬまで撫でくりまわすぞっ!」
オレはどこがでこれを観察してるヤツに向かって吠えた。
さわさわっ
こちょこちょっ
「ウニャアッ~~~、ニャハハッ、ウニャッ! ウニャハハッ!!」
「ほ~れほ~れ、このままだと貴様の可愛いニャンコが悶絶死するぞぉぉっ」
「ニャハッ、ニャハハッ、わはっ! 笑いしゅぎっ・・・って、きゅっ、きゅるしいニャァッ・・・ニャハハァァッ! ・・・ガクッ」
あっ、轟沈した!
ってか、今、ガクッって言った。
芸達者な猫だな。
笑い疲れてグッタリした子猫を座布団にそっと寝かせると、オレは変身着ぐるみを急いで脱いでから部屋着に着替える。
それから、隠しカメラを探した。
「むっ・・・・うぬぬぬ・・・・ないっ!」
「・・・当たり前ニャ」
むむっ、やっぱり子猫が喋っているみたいだ。
これはなんだ・・・アレか?
ファンタジーな展開が始まるのか?
いや、それに見せかけたホラー展開がこの後すぐですか?
どうなっているんだ?
「まぁ、落ち着くニャ」
なんということでしょう・・・この子猫は器用な事に、座布団の上で正座してやがるっ!
ちっ、ありえないポーズをしやがって・・・可愛いじゃねぇか。
「よしっ、いいだろう。・・・で、お前は何者だ?」
「ケットシーニャッ!」
「ほほう、ケットシーニャか・・」
「いあいあ、ケットシーですニャ」
「ほう? 長靴でも作って欲しいのか?」
「いあ、それはご先祖様ニャ。ミケは統領の使いで参ったのですニャ」
「なるほど」
「そうニャ・・・って言うかぁ、『長靴を履いた猫』の話イコール、ケットシーっで理解するなんて、・・・あんた、変な人ニャ。普通ニャら、『猫が喋ったぁっ!』って驚きまくるはずニャ」
「ほっとけ! で、猫の妖精であるケットシーが、オレに何の用だ?」
「だから、お使いニャ」
「ふむ」
「それよりも、お茶とか出ないのかニャ? できれば、紙パックじゃニャい瓶牛乳がいいニャ」
「図々しいな、お前」
「ついでに、お刺身とか欲しいニャ。青身の魚は黄色脂肪症にニャるので白身で頼むニャ」
「厚かましいに訂正」
「お願い~~~。昨日から何も食べてニャいニョ~っ」
正座の次は土下座しやがった・・・いや、猫がよくする伸びをしたのか?
どっちだ?
「まぁ、いい。今日は奇妙な事が次々起こる不思議デーみたいだから、もうちょっとだけ付き合ってやる」
「あんた、ツッコミどころ満載のマンガ脳ニャ人だけど、いい人ニャっ」
「・・・イカとタマネギ食わすぞっ」
「ゴメンニャサイ。加熱したイカは少しニャらオッケーだけど、ネギ類全般は溶血性貧血をおこすから危険ニャニョォォッ」
「そっ、そうか。それは悪かったな」
「解ればいいニャッ」
「だが、白身魚の刺身はおろか、瓶牛乳なぞないわっ」
「そんニャァァッ・・・」
ミケと言う名前らしいケットシーは凄くガッカリした顔になった。
う~ん、なんか可哀想だな。
「しゃーない、スーパーまで一っ走り行ってきてやるよ」
「ニャァァッ! あんた、いい人ニャっ」
と、オレは近くのスーパーまで行くのであった・・・。
鯛の刺身と牛乳を美味そうに食べるケットシーを眺めながら、オレは惣菜コーナーで見つけた半額見切り品弁当を食っていた。
ふむ、猫と一緒にお食事か・・・ちょっと和む。
「ニャフゥ、満足したニャっ」
満腹になったのか、ミケは『撫でれ!』と言わんばかりにお腹を上にしてゴロゴロしだした。
「・・・で、とーりょーの使いで来たとか、さっき言っていたが、オレに何の用がある?」
「ニャ?」
オレの質問にケットシーはキョトンとした顔だ。
あれ?
「ご馳走様でしたニャッ」
「お粗末様でした」
「フニャァ~ッ、眠くニャったニャ」
「・・・・・・・・・」
「お休みニャッ」
「・・・・用事はメシたかりにきただけか?」
「ニャッ?! そーそー、お願いがあって来た事を危うく忘れる事だったニャ」
頭の中も猫っぽそうだな、コイツ・・・。
ミケは改めて正座しなおすと、頭をペコリと下げて口を開く。
そして、床に転がったままのデジタルカメラを指差・・・いや、前足指した。
「あニョデジカメを譲って欲しくて来たニャ」
「断るっ」
「ウニュウゥッ、やっぱり・・・」
「つーか、ミケさんとやら、お前さんは一応妖精なんだろ? オレが買い物に行ってる間に黙って持って帰ればよかったじゃねぇか?」
「それだと、ご飯貰えニャい」
「・・・正直だな、オイ」
他人に変身できる『着ぐるみ』を生み出すデジカメなんて、そうそうない。
超お宝なのだ。
はい、そうですかと人に・・・いや、猫にやれるもんか。
「それに、デジカメがあんたを所有者として認めてるニョで、ミケは持ち出す事はおろか、触る事すらできニャいニョニャ」
「ほほ~、そうなのか」
「そうニャニョ」
「よしっ、帰れっ!」
「酷いニャッ!」
「だって、こんな面白い物、そうそう手放せるかよ」
オレはデジカメをギュッと抱きしめた。
「ニャアッ! ミケがそれを持ち帰らニャいと、統領に『発見したお前が、持ち帰らんとは何事だあぁっ! 何やってんだゴラアァッ!』って叱られるニャッ!」
「そうか・・・それは可哀想に・・・」
「解ってくれたかニャッ?」
「じゃあ、叱られてくれ」
「酷いニャッ! 鬼ッ! 悪魔ッ! あんた、見た目どおりの悪魔だニャッ!」
「うわぁ、猫に面と向かって言われると凹むわぁ」
「鬼ッ! 悪魔ッ! もっといっぱい言ってやるニャッ! これ以上精神攻撃を受けたくニャかったら、それを寄越すニャ」
精神攻撃ってなんだ?
ひょっとして、悪口の事か?
「メシを食わせた恩人に、随分な口叩くじゃなぇか?」
「ウニュゥッ、そう言われると文句言えニャいぃぃ、卑怯ニャッ! じゃあ、どうしたら譲ってくれるニョか?」
おっ、一応交渉しようとする脳はあるらしい。
統領とやらがどんなヤツかは判らんが、手下がこれじゃあ・・・なんだかなぁ。
猫の妖精ケットシーって言うから、内心はどんな事をしでかすのか少々身構えていたのだが・・・。
人語での会話ができるのと可愛い以外取り柄がないのか、コイツ?
まぁ、面白いのでミケとのお喋りを続けてやるか。
「ふむぅ・・・・じゃあ、これと同じくらいの価値あるもんと交換ならええぞ」
「ニュゥ~~ッ」
ミケは前脚で頭を抱えて、クネクネ踊りだした。
考えてるポーズなのかなぁ、これ?
まっ、見てる分には微笑ましい愛くるしさなので、どうでもいいけど・・・。
ミケは5分程、ウニャウニャ呟きながら悶えていた。
そして、
「電話貸してくれニャッ!」
と、顔を上げて言った。
「どこにかけるんだ?」
「統領ニョおわす魔界ニャッ!」
「・・・・」
電話通ってるのか、魔界?
「そニョデジカメが欲しいニョは統領ニャッ! だから、統領と交渉するニャッ!」
「ふむ、そーいうことなら・・・・って、待て待て」
「ニャッ?」
携帯を取り出しかけ、オレはミケに訊ねる。
「魔界に繋がるは別として、国際電話並みに通話料がメチャクチャかかるんじゃねぇだろうな?」
「じゃあ、リダイヤルして貰うニャ」
「そっ、そうか・・・」
「貸してニャッ!」
魔界に繋がるのか興味もあるし、オレは携帯電話をミケに貸す事にした。
サイズ的に持ってかけれなそうなので、携帯を近づける。
ピッピッピッ・・・・
携帯のボタンを器用にプッシュする猫。
シュールだ。
しかし、どんな会話するのか微妙に気になる。
オレは携帯電話に顔を近づけて、耳を澄ませた。
ガチャッ・・・
「もしもし、お電話お掛けいただきありがとうございます。ありがたき事なのですが、大変申し訳ございません。当方ただいま、力が半減しており召還に応じられません。ご面倒と思いますが、力が復活するまでお待ち下さ・・・」
どこの営業マンだよっ?!
と、ツッコミたい。
しかし、電話越しに聞こえる声は渋くてけっこういい声だ。
謝りの言葉が長くなりそうだったが、ミケが途中から遮る。
「ケットシーにょミケニャッ!」
「おおっ、ミケか? 知らない番号からだったから、ついニューフェイスの魔術師からの召還かと思ったぞっ!」
妖精って最近じゃ、電話で呼び出すのか?
「ついに見つけたニョッ!」
「おおっ、それは真かっ?!」
「でも、困った事に・・・」
長くなりそうだな・・・。
「かけ直すんじゃなかったのか?」
「ニャッ?!」
「ん? 側に人間がおるのか?」
「そうニャッ。詳しく話したいから、かけ直してニャッ!」
「えぇ~っ?! 最近、長電話しすぎでちょっと嫌なんだけど・・・。メールじゃ駄目か?」
「駄目ニャッ! ミケの手だとメールは辛すぎるニャッ! それに、これは統領にょ死活問題解決にょチャンスニャッ! かけ直してニャッ!」
「しょうがないなぁ・・・じゃあ、一旦切るよ」
「そうしてくれニャッ」
プツンッ・・・・・プルルルルッ・・・ガチャッ
「もしもし、ミケか? 我輩だ」
「簡単に説明するニャッ! カクガクシカジカ・・・」
「なんとっ?!」
「じゃあ、後は統領が人間と交渉してニャッ!」
「よかろう。さあ、人間と交代するがよい」
向こうからかける時は、威厳があるみたいなんだけど・・・さっきの会話聞くと、なんだかなぁ。
「どうぞニャッ」
ミケが携帯から離れる。
そして、座布団の上で丸くなると、そのままフニャフニャと眠りに付いた。
なるほど、ミケのヤツ、考えるのが面倒になって統領とやらに交渉を丸投げしたみたいだ。
妖精の親分との会話か・・・ドキドキするね。
「もしもし」
「クックックッ、いい気になるなよ人間っ! 我輩は魔界の統領の一柱っ! 30の悪霊軍団を従える長官なるぞっ! 殺されたくなければ、我輩の右目を封印した魔道具の所有権を放棄し、ミケに渡すのだっ! ついでに3万円ほど現金を捧げてくれると嬉しい。死にたくなければなぁっ!」
「・・・・えっと、3万円は何に使うの?」
「あぁ、最近シールオンラインってネトゲに嵌っててな。その課金アイテムに使うのだっ!」
「・・・キャラ、何使ってます? サーバーは? ギルドとか入ってます?」
「ん? おぉっ、『尾瀬きゅん』って名前の剣士を使っておるぞ。鯖は朱雀鯖での、ギルドは『れめげとん』に入っておる」
「あぁ、なるほど。『れめげとん』って昨日、『疾風ねこねこ団』とハナイエル・クエしたところですよね?」
「そうそうっ、そこのプリーストさんには大変お世話になってねぇ。彼女の支援がなかったら、我輩のキャラは足手まといであったからのぉ。それで、な。クエが終わった後、『猫のまこと』たんと友達登録しての。さらにの、カップルになったんじゃ。キャッキャッウフフッと楽しきチャットを楽しんだのじゃ。女の子とチャットだぞ? どうじゃ、羨ましかろ? いやぁ、ネトゲとは面白きものよのぉ」
魔界って、ネットも繋がっているのか?
つうか、口軽いな、コイツ。
いやいや、それよりももっと重要な事言いやがった。
『魔界の統領』、『30の悪霊軍団』で、ちょいとググッて検索っと。
ん~、まだ絞れそうにないな。
妖精の名前じゃなく、悪魔の名前ばっかりが候補に出てくるな。
『れめげとん』も加えて検索するか・・・。
『尾瀬きゅん』ってキャラ名も考慮に入れて探すか。
しかし、オレもシールオンラインと言うってネットゲームをしているのだが、まさか昨日一緒に遊んだ連中の中にミケの上司がいようとは・・・げに、世の中は狭いものよ。
ついでに、残念なお知らせはした方が良いなと、思うオレであった。
「『猫のまこと』はオレだ」
「えっ? なん・・・だと・・・? ・・・・・・・・嘘? だって、『猫のまこと』たんはОLサンって言っておったぞ」
「言ってない。つーか、打ってない。会社に勤めてますと独身ですよは打った。脳内補完するな。ついでに『たん』を付けるな」
「・・・・・・・・・・」
「もしもし?」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」
うわっ、なんか凄い叫びあげてら。
まるでライオンの咆哮みたいだ。
しかし、異性のキャラを使う事ぐらい、ネトゲの基本だろうに・・・。
「もしも~し・・・あの? 男が男キャラしか使ってはいけないってルールないんですよ。知らなかったんですか?」
「おーい、おいおいっ、グシュグシュ・・・」
まだ泣いてら・・・。
このままだと話が進まんな。
おっ、PC上でミケの上司の名前っぽいのを発見!
悪魔かな?
それに、よくよく思い出せば、デジカメに『OSE』ってあったな。
よし、呪い殺されぬよう、交渉に使うとしよう。
「えっと、交渉はどーするんですか~? デジカメ、オレのモノのままでいいかな?」
「うぉんうぉんっ・・・よくないっ!!!」
おっ、立ち直った。
「おのれ人間っ! よくも我輩のピュアなハートをズタズタにしたな?!」
「勝手に勘違いしたのは、『オセ』さんじゃないですか? そんなに傷つかないで下さいよぉ」
「っ?! 名乗っておらぬのに、何故、我輩の名前を?」
いあ、名乗ったも同然です・・・。
「・・・えっと、交渉に戻ってもいいです?」
「くっ・・・はい」
「このデジカメ、手放したくないんですけど・・・」
「それは困るっ! それには奪われた我輩の右目が封印されておるのだ。両目が揃ってないと魔力が半減したままなのじゃ。おかげで人間界にも行き来できぬ始末よ。頼む、殺さないからその魔道具を返してくれ」
ふむ、我ながら凄いのとお話になってきたぞ。
まさか悪魔様だとはねぇ。
まだ死にたくないし、ここは素直に返してやるか・・・・いあ、せっかくだし、もうちょいお喋りするか。
「で、ミケから聞いたと思うんだけど、このデジカメと同じくらいの価値あるもんと交換ならOKって感じなんだけどぉ~・・・どうです?」
「うぬぅっ、痛い所をついてくる。一応言っておくが、人間・・・我輩は今貧乏なのじゃ。金はないっ!」
「いあ、お金は欲しいけど、こーいう不思議な能力が使えるようなグッズと交換しましょって言いたいんだけど」
「ぬぅっ、いや、な・・・5年程前から我輩、力が半減したままでの。それと同等の魔力のある魔道具は、質草にいれてしもうてのぉ。はっきり言うと、ないっ!!」
どこまで情けないんだ、この悪魔。
いあ、力を失っているからちょっとアレなのか?
どうしようか・・・。
「弱ったのぉ・・・うぅぅむっ」
本気で悩んでるっぽいな。
まぁ、命を奪わないと約束を取り付けて素直に返す方が平和的かぁ。
なにせ、相手は悪魔だしな。
「おおっ! そうじゃっ!」
「ん? どうしました、オセさん?」
「やれるような物はないが、代わりに・・・力欲しくない? 力?」
「OH! 力いいな力。パワー最高!」
「魔道具返してくれたら、お礼に普通の人間が一生体得できない力を汝に与えようぞ」
「OH! それってどんなパァウアー?」
「もちろん魔力よ。汝は我輩の魔力が篭った魔道具に選ばれたのじゃ、汝には魔術師としての才能が眠っておるじゃろう。そこで、だ・・・我輩が汝の肉体に潜む魔力を覚醒させてやろう。きっと、力のある魔術師に進化するっ! もちろん、アフターケアとして我輩自らが魔の技のいくつかを直接指導もするぞ。これで、どうじゃ?」
「マジ?」
「まじまじちょーまじ」
以外にファンキーだな、悪魔・・・。
それはいいとして、魔術師にしてやるって交換条件は面白いな。
いや、超魅力的。
魔法使いってなんか憧れるねぇ。
仮になるとしてだ・・・魔術師としてTV出演でもしたら有名人じゃん。
定年後も職ありつけそうだしなぁ。
ちょっと良いかも・・・。
・・・続く